表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/223

第五話「蝶と煉獄」 1/15

 空がわずかに赤みを帯び始めている。


 下校時刻、李渦高校の制服を着た男女四人。他愛もない日常の風景だが、四人の中には二名ほど、普通とは程遠い仕事を生業にしている者がいる。とはいえ今はみな平等に、ただの学生だ。


「今日の数Aぜんっぜんだったなあ……勇輝、あれわかった?」


 四人の中で唯一非日常に遭遇したことのない御神楽が、困ったような笑顔でそう振り返る。


 話しかけられた勇輝は、表情を変えないままこくりと頷いた。


「一応。お前は文系なんだから、多少難しくても気にすることはないだろう」

「んーそっかなあ」

「私はどの授業もよくわかんないなー」


 けらけらと笑い飛ばしたのはこの中では紅一点、猪突猛進の由紀だ。彼女も一般人ではあるが、御神楽と違い、シブキと勇輝のもう一つの顔を知っている。


「自信持って言うことじゃねーっての」


 ため息交じりにシブキが窘める。


 それに便乗するかのように、勇輝も呆れ顔で由紀を睨んだ。


「これだから猪は……」

「なっ……アンタだって意外と脳筋――」


 由紀の言葉は、勇輝の携帯端末の着信音に遮られた。これ幸いとばかりに勇輝は嗤う。


「ハッ、悪いな」

「思ってないでしょその顔」


 指摘通り、清々しいほどに悪い笑みである。


 しかし勇輝はぶうたれる由紀をスルーして、端末の画面を少し弄った後、スピーカー部分を耳に押し当てた。


「……はい、黒神です。要件は手短にどうぞ。…………ああ、中位の。了解です、場所は?……南李渦。はい、はい」


 電話をしながら、勇輝の視線がちらりとシブキに向けられる。


 意図を察したシブキの眉間に皺が寄る。


「また出たか……」

「ねえ、勇輝の電話って、もしかして」


 ぼそりと呟いたシブキに、御神楽が声を潜めてそう尋ねた。御神楽はシブキと勇輝の仕事の本質を知らないが、治安維持の仕事をしているという話だけは聞いている。そわそわした様子を見る限り、中途半端に開示された情報に好奇心を刺激されたようだった。


「そ。仕事の緊急要請」

「そういえばずっと聞こうと思ってたんだけどさ、その仕事って何やってるの? 警察みたいな?」

「警察、ってのはちょっとちげーけど……まあ連携もしてるし、近いモンだな。お尋ね者とっ捕まえるとか、凶暴な生き物に対処したりとか」

「へー……」


 シブキは龍、勇輝は龍使いである。


 この世界には異獣と呼ばれる怪物が存在して、それらから市民の生活を守るべく彼らは日夜戦っている……のだが、いかんせん一から説明するには複雑だ。


 そういうわけで、二人は学校内では適当に誤魔化して伝えている。間違ったことは言っていないから問題はない、多分。


「わかりました。すぐ向かいます」


 一区切りついたらしい勇輝は、端末を一旦耳から離す。先ほどよりも少し、険しい顔だ。


「柚木さんから?」

「あれ、田村さん知って――あっそっか、田村さんは勇輝たちの仕事、見たことあるんだっけ」

「そーですね……たまたま」


 てへへとはにかむ由紀は、電話の相手を尋ねたことも早々に忘れている。


 面倒ごとを嫌う勇輝としては、答える手間が省けてありがたい。問いは無視して相棒と目を合わせる。


「シブキ、南李渦の市街地でクレナイスズメの反応が出た。急ぐぞ」

「雀?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ