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たった一回のアイコンタクトで、勇輝は意図を理解する。
「言われなくとも」
後は任せた、と。そういう意味だ。そんなこと、わざわざ指図されずとも、そもそも俺の領分だ。
こくりと頷いて背を向ける由紀を、シブキが肩越しに盗み見た。
「……シブキくん、本当にいいの?」
事情を知らない御神楽に尋ねられると、
「大丈夫大丈夫、アイツ不屈の精神だから」
と笑った。はぐらかしているようにしか勇輝には見えない。猪女が大丈夫でも、お前は大丈夫じゃないだろう。そう怒鳴ってやりたい気持ちをぐっと抑える。
「……シブキ」
「んー?」
「帰ったら、ブレドラ付き合え」
威圧するような声で勇輝が言うと、シブキは不意をつかれて目を丸くし、それからぷっと笑いを漏らした。
「お前、ホントそれっばっかだな。いーぜ、また負けてやるよ」
今度は本当に笑っている。
内心抱いた安堵を隠すように、勇輝は不敵に口の端を上げた。
そんな二人のやりとりに素っ頓狂な声を上げたのは、御神楽だった。
「えっ、これから遊ぶ予定あるの?」
そういえば、御神楽にはシブキの住居事情を話していない。もうだいぶ遅い時間なのに、今更ゲームの約束を取り決めているというのも、普通に考えればおかしな話だ。
御神楽をすっかり置いてけぼりにしてしまったことに気がついたシブキは、やや間を空けてから説明する。
「色々あって、勇輝ん家に居候させてもらってんだよ、俺。実家が結構遠くにあるんだけどさ、こっちの方で仕事するってーと、家探すのもなかなか面倒で。ちょうど勇輝は仕事の相棒だし、何かと都合いいモンでな。んで、家賃代わりにこいつのゲームに付き合わされてる」
それを聞いた御神楽は目を輝かせる。
「えー、いいなぁ! 僕も行っていい?」
「ああ、構わん」
「親御さんにゃ連絡とっとけよ」
「大丈夫、僕は一人暮らしだから」
さらりと言ってのけた。高校二年生、未成年で一人暮らし。それが意味するところを、シブキはよく知っている。
「光輝も両親を亡くしているんだ。一応里親はいるんだが、その人も音信不通で。生活費は送ってくるんだが顔は出さない」
明るく悩みのなさそうな顔をしながら、そんな苦労を背負っていたとは夢にも思わなかった。シブキの表情が複雑なものに変わる。
「そうだったのか……。配慮がなかったな、すまん」
「あはは、いいよいいよ、気にしてないし。それにさ、龍魔くんも、なんでしょ?」
悪戯っぽく笑いながら、御神楽はシブキを覗き見る。
「あー、聞いてたか。まあな」
「三人みんな親無しかぁ。ははは、仲良くなれそうだね、僕ら」
「お前笑顔ですげぇこと言うな……」
「まあ、あの猪女に比べれば、光輝はずっと扱いやすいしいい奴だ。苦労性なところはお前に似てるし、気が合うんじゃないか」
「苦労性は十中八九お前のせいじゃねーの?」
「あはは……」
傍から見れば、明るい御神楽が冷静な勇輝を振り回しているように見えるかもしれないが、事実は恐らく逆だろう。
「……ま、いいか。勇輝が他人を褒めるなんざ滅多にねぇ。それだけで十二分に信頼できる。これからよろしく頼むぜ、御神楽」
「うん。よろしく、龍魔くん!」
にこりと楽しそうに御神楽は笑う。つられるようにして、シブキも柔らかな笑みを浮かべた。
夕日が焦がす空の下、何の変哲もない下校風景。
高校生二人と、人に扮した龍が一匹、橙に染まった世界で笑い合っていた。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
一万八千歳のサバ読みをして転入してきたシブキですが、これからどうなっていくのでしょうか。
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第五話でも新キャラが登場しますので、お楽しみに!




