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「お前の場合、俺と違って優しいからつけ込まれないか心配なんだ」
「俺そんな鈍感じゃねぇっての」
「……ふふ」
シブキと勇輝のやり取りを横で見ていた御神楽が、くすくすと笑っている。
「なんだよ……」
「……何にやけてるんだ」
「いや、ごめんごめん。仲良いんだなーって思って。ほら、勇輝って無愛想だからさ。僕以外にも友達いたみたいで安心したや」
「否定はせんどく」
「失礼な奴らだな……」
何故か散々に言われ、気に食わない表情で勇輝が唸る。信頼する相手にさえこんな態度なのだから、交友関係において支障をきたしていないか心配されるのも肯ける。
実際シブキも、この高校に来た今日までは、勇輝に友人はいるのだろうかと不安に思っていた。杞憂だったことは明確だが。
「けどさ、御神楽と勇輝も仲いいじゃねーか」
「ふふふ、親友だもんね!」
「……ふ、そうだな」
無垢な笑顔で断言した御神楽を、勇輝は柔らかい微笑で肯定する。なるほど実直な青年だ、どうりで勇輝が気に入るわけだ。
良くも悪くもまっすぐな勇輝は、二面性のある者を嫌う。素直で大人びていない光輝の隣は、勇輝にとって居心地の良い場所なのだろう。
高校二年生、十七歳とはいえまだ青い。その幼稚とも呼ばれる若い友情を、長い時を過ごしてきたシブキは優しい眼差しで見守っていた。
そんな三人に向かって、全速力で走る乙女が一人。
「シーブーキーくーん‼︎」
「げ……」
「チッ」
言わずもがな、田村由紀である。やっとのことでシブキたちに追いつくと、ぜーはー肩で息をしながら、睨むようにシブキと目を合わせる。結構な気迫である。
「はー……はー……シブキくん! 元気⁉︎」
「おう。お前は見るからに元気そうで何より」
「うん元気! 学校どうだった⁉︎」
「オメーは俺の保護者か?」
アバウトな質問を投げかけた由紀を見た御神楽が、あれ、と言いながら首を傾げた。しばらく彷徨った視線は、彼女の制服の胸に付けられた赤色のネームプレートを捉えて止まる。
「勇輝、彼女確か、朝来てた子だよね? 一年みたいだけど、知り合い?」
「まあな。仕事の一環で助けてやったらシブキに惚れ込んで、それからずっとあんな感じだ」
「おお……なかなか大胆な子だね?」
「ただの猪だ、気にするな」
勇輝の「猪」という比喩は確かに間違ってはいないだろうが、仮にも女子相手にその言い草はどうなのか、と御神楽は内心苦笑した。勇輝に言ったところで素っ気ない返事が返ってくるだけなのは目に見えていたので、言葉には出さないが。
勇輝と御神楽が話していた間に、由紀の持ち出した話題は終わりを告げたらしい。同時に、学校の居心地だのなんだのを聞くのが由紀の本当の目的ではなさそうだ、ということも見て取れた。
先ほどまでの威勢はどこにいったのか、躊躇いがちに由紀がシブキを見上げる。
「……ねぇシブキくん、言いたいことがあったんだけど」
「なんだ? あー、言っとくけど告白なら間に合ってるぜ」
「違うって! その…………まず、この前のこと。心配かけちゃってごめん」
あの時――目目連の一件のあと、結局言えなかった言葉。
由紀にとって言いたいことはたくさんあれど、始めに伝えなければならないのはこの言葉だと思っていた。




