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シブキもいい加減、この二人の扱いに慣れてきたらしい。
シブキに適当な仲裁をされると、どうにも二人とも興が冷めるようで、不満を残しながらも口を噤む。
「まずお前を連行した理由だけど。俺の正体は一応、ここじゃ伏せてる。お前うっかり漏らしたりしそうだからな、先に口止めしとかにゃならん、と」
「あ、うん、否定はしない。……となるとじゃあ、黒神も? やっぱ龍使いってのは伏せてるの?」
「説明するのも面倒だからな。クラスメイトや教師には、治安維持の仕事をしているとだけ伝えてある。ここの校長は龍や龍使いに理解があるから、授業中でも出動要請があれば動けるよう、話をつけてもらっている。シブキも同じだ」
「校長、龍とか知ってたんだ……」
「そういうこった。変に注目集めんのも、パニック起こすのも嫌なんで、口外はナシだ」
「う、うん」
非日常は存外すぐそばにあるんだな、などと上の空に思いながら、由紀は情報の整理を始める。
えーと、まず、シブキくんは転入生として来ていて。黒神はこの学校の生徒で。それで……。
「しかし、お前も随分な年齢詐称をするものだな」
「へ? 年齢詐称?」
「いーんだよ、見た目年齢からすりゃバレねーだろ」
「え? シブキくん十八じゃないの?」
ただでさえ弱い由紀の集中力は、その会話で途切れた。年齢詐称とは一体。そちらに興味がいってしまって、情報整理のことなどすっかり忘れている。
シブキは由紀の質問に答えるように顔を向ける。何やら真剣なような、企んでいるような。
「十八ってのは人間の姿の時の見た目年齢。……実年齢、聞きたいか?」
あ、これ企んでるやつだ。すぐに由紀は理解したが、それでも好奇心は抑えられない!
「……うん、気になる」
ごくりと生唾を飲み込んでそう答えると、シブキの口角が緩く上がる。そして告げられたその数字は。
「一万八千四百七十六歳」
「………………いち?」
「一、八、四、七、六」
「いち、はち、よん、なな、ろく…………エッそれって一万――」
「声を落とせ馬鹿」
「…………一万歳越えってこと⁉︎」
勇輝に指摘されてどうにか大声を上げることは防いだが、小声といえどその口調にはかなりの動揺が表れている。
それもそうだろう。同い年ぐらいだと思っていた想い人が、実は十世紀どころではない年月を生きていたとなれば。しかも外見は普通の青年だからなおさら。
確かに最近は見た目は若いが中身は超長寿、という設定のキャラクターが流行ってはいるが、現実で起こるなど到底思わない。
当のシブキはというと、愉快そうにけたけた笑っていた。
「そうだ。龍の平均寿命は大体十万年で、人間の寿命をわかりやすく百年として換算すっと、十八歳くらいってこと」
「えっ、めちゃくちゃ年上じゃん……紀元前から生きてたの?」
「とっくに」
「ひぇ~すごい……だからシブキくんってこう、青さみたいなのがないんだね」
「納得はえーな? ってかそれ褒めてんのか貶してんのか、絶妙にわかんねぇんだけど」
由紀の脳は、常人よりも単純な回路でできている。故に複雑なことへの理解は困難だが、普通の人間であれば頭がパンク寸前になるような、奇天烈で常識や一般論が通じない話への飲み込みは案外いい。




