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 そういう類のものは大抵、理解しようとすると迷宮入り一直線なので、由紀のように感覚で生きている者の方が強いのかもしれない。


 せっかくなら大昔の地球の話とか聞いてみよう、そう思い立って由紀が口を開いた矢先、彼女の耳が聞きなれた声をキャッチした。


「由紀ー!」

「佳純!」


 由紀を追いかけてきたらしい佳純が、三人の方へ近づいてくる。


「いきなりいなくなっちゃうからびっくりしたよ、もう」

「うっ、ごめん」

「あ、由紀がご迷惑かけてませんか? 黒神先輩、あと、えっと……」

「龍魔飛沫だ。君は?」

「中澤佳純っていいます。お二人とも、由紀のこと知ってるんですか?」

「ああ。知り合ったのはつい最近だけどな」

「そうなんですか……あたし、由紀の幼馴染なんです」


 しっかりしていそうな少女である。自由奔放な由紀とは真逆にも見えるが、そんな彼女を見て真っ先に思うのは。


「……苦労してるな」

「ちょっ黒神、どーゆーことよそれ!」

「もう、慣れてますから……」

「否定しねーんだな……」


 遠くを眺めながら答える佳純に、シブキも勇輝も同情の眼差しを向ける。特に苦労性のシブキには、彼女の気持ちがひしひしと伝わってきた。


「あ、それより由紀! 早くしないと、もう授業始まっちゃうよ!」

「えっ、もう⁉︎ やっば……ごめんシブキくん、またね!」


 慌てた様子で二人の少女は走り去っていく。廊下は走るべからずとか、時間がない以上そんな注意は野暮だろう。いや、言っても多分もう聞こえない。


「相変わらず慌ただしいヤツなこって……」

「やはり猪だな」

「……っと、俺たちもそろそろ行かねぇとな。初日から遅刻とか世話ねーし」

「そうだな。行くか」


 シブキと勇輝も、まだ少し賑わう廊下を引き返す。


 何はともあれ、この学校での生活は楽しめそうだ。





 昼休み。大抵のクラスメイトは遊びにふけっているようだが、勇輝と御神楽はすでに五限の準備を終えていた。


 二年二組の五時間目は体育である。


 着替えを終えてグラウンドで待機していると、二人のもとにシブキが合流してきた。


「よう、待たせたな」

「……長袖…………」

「龍魔くん、もしかして寒がり?」

「まあな。……おい勇輝、お前そんなドン引きすんなや」

「毎度のことではあるが、見てるこっちが暑苦しい」

「ンなこと言われてもなぁ」


 シブキは大抵、年中長袖のジャージを着用している。今日は授業なのでいつもの水色のものではなく、学校指定の紺のジャージだが、今は五月。


 果たして上着を羽織る必要性はどこにあるのかと、半袖体育着のみを着ている勇輝は思う。


 三人が他愛もない話を続けていると、もう一つ、近づいてくる人影があった。


「やあ、みんな早いね」

「あー、確か……谷崎、だっけか?」

「覚えていてくれて嬉しいよ、龍魔くん」


 彼こそが、女子の間で勇輝に並ぶイケメンと噂になっている、谷崎斗真(たにざきとうま)である。


 二組の生徒会役員で、次期生徒会長候補だ。勉学、運動ともに好成績で、おまけに顔も整っている。勇輝と違って素っ気ない性格でもなく、むしろ誰に対しても友好的だ。


 ただ、シブキには少し、彼の言動は芝居がかっているように見えた。

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