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 そう、由紀の目線の先にいた者は。


「シっ……ししししシブキくん⁉︎」

「お、由紀だ」


 お手本のような驚き方をした由紀に、教室の奥にいた転入生にして由紀の想い人であるシブキも気がついたようだ。ちなみに見知った顔はシブキだけではない。


「……………………お前ここの生徒だったのか」

「黒神まで‼︎ なんで⁉︎」


 由紀の宿敵兼シブキの相棒、黒神勇輝もちゃっかりそこにいた。世界とは狭いものである。


「あれ、なんだ、知り合い? というか由紀、黒神先輩のこと呼び捨てにしてるの?」

「エッだってなんかムカつくやつじゃん」

「えー、黒神先輩めちゃくちゃイケメンで有名だよ!」

「そうなの?」


 そんな噂は初耳だ。ついでにいうと勇輝自身も初耳である。


「何人も告白しに行ってるけど、その度みんな断られちゃって。でもその硬派な感じが逆にイイ! って。谷崎先輩と並ぶ人気で!」

「ごめんそもそも谷崎先輩が誰だかわかんない。それにだって、黒神ってただの――」


 変人、と言いかけたところで、言葉を遮るように、ずんずんとシブキと勇輝が向かってくる。


「よう、久々だな由紀! ちょっとこっち来い、な?」

「えっいやあのシブキくんこれ、何がどうなって」

「黙ってついてこい、猪」

「アンタやっぱりムカつくーッ! あっちょっと待って待って二人とも何⁉︎ どういうこと⁉︎」


……強制連行。


 呆然とする佳純とその他大勢を置いて、シブキと勇輝は由紀を連れて行ってしまう。


 廊下の角、人気の少ないところまで来てやっと、シブキの足が止まった。


「えっ、ね、シブキくんあの……」

「よう。転入生の龍魔です」

「『龍魔です』じゃなくて! っていうか噂の転入生てシブキくん⁉︎ 確かにイケメンだけども! イケメンだけどもッ‼︎」

「そりゃどーも」


 そう。顔がいいとか悪いとか以前に、彼は人間ですらないのである。


 人の姿をとってこそいるが、その本性は水龍だ。由紀自身は彼の龍の姿を見たことはないが、それでも彼に異獣と呼ばれる化け物から助け出されたとき、彼の人間離れした戦闘能力は目にしている。


 人ならざる者である彼が、何故人間なんぞの学校に入ってくる必要があるのか。しかもこのタイミングでわざわざ、だ。


「まあ潜入調査みてーなモンだよ。この高校はちっと特殊だ。龍使いの勇輝と、妙に波動に鋭いお前がいる。波動に鋭いヤツは異獣にも狙われやすい。万が一、俺のいないときに異獣が現れると厄介だから、支部長に頼んで転入生としてここに来たのさ」

「……まったく、事前の報告もなしにいきなり来るものだから驚いたぞ、シブキ」

「サプライズってのもアリだろ?」

「ドッキリの間違いじゃないのか」


 会話を聞く限り、相棒である勇輝も聞かされていなかったらしい。茶目っ気というべきか否か。


 事の大筋はわかった。いや由紀の場合、正確に言えば「わかった気になっている」が正しい。それはいいとして、疑問はまだ尽きない。


「で、でもシブキくん龍……ってか黒神もいたの?」

「質問をまとめろ。……俺はもともとここの生徒だ。まさか猪が同じ高校にいるとは思わなかったが……」

「私だって毒吐きマシンがいるとは思ってなかったっつーの‼︎」

「はいはい静粛に静粛に」

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