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「あっそうなの? もしかして、シブキくんたちが助けてくれたってこと?」

「そ」

「そっかあ。ありがと、二人とも」


 由紀は二人に向かってへにゃりと笑う。シブキだけでなく、きちんと勇輝も数に入っている。


 変に律儀だと調子が狂うのか、勇輝はなんとなく居心地悪そうに目を逸らした。


「お前照れたりすんのか」

「照れてない」

「あ、ところで、柚木さんの隣の爽やか好青年はどちら様で?」

「……えっ、私かい?」


 由紀の視線が突如自分に向けられたことに驚きながらも、青年は一つ咳払いをして名乗りを上げる。


「私は龍魔雹(りゅうまひょう)。シブキの兄で、律也……柚木の契約龍だよ」

「エッお兄さん⁉︎ 確かに似て……似……似て……?」

「兄弟みんなそっくりだったらこえーっての」

「た、確かに……」


 しかし由紀は未だ驚愕しているようで、シブキとヒョウの顔を交互に眺めている。


「へぇー……あ、でも顔がいいのは同じだ。よろしくお願いします、ヒョウさん!」

「うん、よろしく。君は田村由紀さん、だったね。噂は聞いてるよ」

「噂になってるんですか私?」

「あはは」


 笑って濁されてしまったが、由紀にとってそこまで重要な問題ではなかったので、言及することはしなかった。何より本人からすれば噂になるような突飛なことなどした覚えがないため、気にする必要性を感じなかったのである。


 緩い様子でヒョウや柚木と話している由紀の後姿を、シブキと勇輝は何やら神妙な面持ちで見つめていた。


「……シブキ。言いたいことがあるならハッキリ言っておけ」

「そう、だな……」


 ため息とともに躊躇を逃がして、意を決したシブキが由紀の元へと歩み寄る。


「由紀」

「ん、なに?」

「話さなきゃいけないことがある」

「え、うん?」


 何が何だかさっぱりわからない由紀は、真剣な表情で自分を見つめるシブキに戸惑いの視線を返す。


「お前は二度異獣に狙われた。しかも今回は、俺たちをおびき出すおとりとして使われたんだ。だからお前は殺されずに済んだとも言えるが、……もし俺たちが負けていたら、お前も生きちゃ帰れなかっただろう」

「…………う、うん」

「だから、友人の頼みとして聞いてほしい。お前が俺たちと関わったが故に異獣に狙われるなんてことは、本来あっちゃいけないことなんだ。今更縁を切れとまでは言わねぇ。ただ……あまり俺たちに近づきすぎないでくれ」

「……」


 頷けなかった。否定することもできなかった。


 シブキの、淡々と諭すような口調の裏に、失う恐怖と罪悪感の波動が渦巻いているのを、由紀は無意識のうちに読んでしまったからだ。


 それでも何か、言わなければならない。


「でも、」

「わかってる。お前のことを思って言ってるんじゃないんだ。……俺のエゴなんだよ。お前の意思なんて無視した、自分勝手な頼み事だってことくらい、わかってるんだ」


 苦しそうに吐き出される言葉の一つ一つが、由紀に有無を言わせなかった。


「頼む。由紀」


 答えは不要と言わんばかりに背を向け、由紀から離れていく。


「……俺の前で、死なないでくれ」


 ぽそりと呟かれた彼の本音を、由紀の耳が聞き取ってしまったから。その言葉の裏にある感情がわかってしまったから。

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