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「アレ、か。任せておけ。そっちこそ途中でくたばるなよ、相棒」
「当然」
どちらからとでもなく拳を軽く合わせ、二人は未知の扉へと歩を進めていく。
「さ、行くぜ。――勇輝、この先で落ち合うぞ!」
「ああ!」
がらりと勢いよく開かれた扉の奥、全く同時に足を踏み入れる。
しかしシブキの予想通り、目目連の空間に入った瞬間、相棒の姿はいなくなっていた。
足元は畳のようで、辺りの壁には障子が張り巡らされている。さっき入ってきたはずの背後の扉は消え失せており、代わりに別の襖が部屋の奥に佇んでいた。
シブキの存在を認識すると、次々と障子に目玉が生え始める。ぎょろりとした眼球全ての視線が、異物であるシブキに集まっている。内心薄気味悪くはあったが、そんなことに注意を向けられるほどの余裕はない。
(……波動が読めねぇ。目玉のせいか? 恐らく、隠れているだけで数体の百々目鬼がいるはず。さて、いつ襲ってくるか……)
悠長に敵を待つ時間もないので、シブキは剣を出現させ、威嚇するように空を斬る。
シブキが剣を振り切り、隙ができたように見えた瞬間、何もいなかったはずの空白から百々目鬼が一体現れ、シブキに襲いかかった。
「だろうと思った、ぜッ‼︎」
動きを先読みしていたシブキは素早く屈んで爪を躱し、よろめいた百々目鬼に鋭い一閃を見舞って仕留める。
消滅していく百々目鬼を一瞥してから、奥の襖に目を向ける。
「……次の部屋、か。急がなくちゃな……」
速まる拍動を隠すように固唾を呑み下し、襖へ駆ける。それは待っていたと言わんばかりに独りでに開いたが、一切の動揺を覚えず水龍の足は進む。
彼が部屋に入った途端、百々目鬼が二体、四体の目玉鬼を伴って飛びかかった。
「よ、っと!」
掛け声とともにシブキは身を逸らして目玉鬼の斬撃を避け、そのままバック転で敵との距離をとる。
続け様に百々目鬼のうち一体が蹴りを浴びせてくるが、真上に跳躍して軽々と回避してみせた。
「ッチ、数が多いな」
滞空している僅かな合間で、シブキの思考が回る。あまり時間はかけられない。終わらせるなら、できるだけまとめて倒さねばならない。ここで最適な攻撃は。
「――"プレッシャーレイン"!」
技名を叫ぶのは波動を集中させるためだ。宙の最も高いところで、剣を持っていない左の手を地面に向け、その手に全身の意識を向ける。
次第にシブキの左手に集まっていく水分子は、呼び声に呼応するかのように高圧の水流となって降り注いだ。追撃の機を伺っていた目玉鬼たちと百々目鬼一体は、空から落ちる激流の圧で弾け、消滅してしまう。
すたりと軽やかに着地したシブキの剣の先は、残ったもう一体の百々目鬼にロックオンされていた。
「さて……あとはお前だけだぜ」
心の余裕などとうにないが、それでも挑発するように口角を上げれば、百々目鬼は最後の足掻きとして髪に似た触手をシブキへと伸ばす。
凄まじい勢いで己を捕えんとするそれを完全に見切ったシブキは、縫うように躱しつつ百々目鬼の元へと前進する。懐に飛び込んだと同時に繰り出された斬撃は、百々目鬼の体をあっけなく引き裂いた。
目につく敵を全て倒したのを確認し、休む間もなく次の襖へと走る。




