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シブキが由紀に説教をしている間に、勇輝の案件も終わったようだ。そしてどうやら、由紀の興味は勇輝の電話に移ったらしい。
「黒神、何の話して――」
「は? だから支部員にはなりませんよしつこいですね。では」
やけに低い声で電話口にぴしゃりと言い放つと、勇輝は電話相手に是非も言わせず通話を切った。
「ぴぇっ……」
「なんだよ『ぴぇっ』て」
「いやだってびっくりしたから……。誰から?」
「お前に話す義理はないな一般人」
「はぁ~⁉︎ なんなのほんっといちいちムカつく!」
「あーあー……」
また始まった、合戦が。さっき戦闘が終わったばかりなのに勘弁してくれと思いつつ、呆れ顔の水龍は頭を掻く。
「はいはいどうどう、喧嘩すんな。勇輝、おめーは由紀に冷たく当たりすぎだ。歳もほとんど変わんねーんだし、もうちょっと歩み寄れ」
「む……」
「おっこられてやーんの! ざまみろざまみろ」
「おめーもすぐ調子ノんな由紀。ちったぁ落ち着け」
「うっ……」
どうにか二人を鎮めたシブキは、勇輝と由紀に交互に目をやる。瞳に宿る表情が不可解だと言いたげだ。
「ったく、なんだってこう会う度にバチバチバチバチ……」
「そもそもお前が天然たらしなのがいけないんだろうが」
「昼ドラかよ」
「昼ドラゴン?」
「由紀お前はちょっと黙ってろ」
中性的で綺麗な顔立ちから女子に人気な勇輝には、たらしだとか言われたくないものだ。シブキの顔も整っている方ではあるが、特段目立って美人だとか格好いいというほどではない。
恋愛にはほとほと興味のないシブキだが、それでも腑に落ちない様子である。天然というだけなら由紀の方がよほど上をいっているのだし。
とはいえ細事にばかり気を取られていては時間が無駄になる。どうでもいいことをくよくよ考えているのは馬鹿らしいので、シブキはひとまず話題を戻すことにしたようだ。
「それで? なんて言ってた?」
「ああ、支部長の話だな。情報課の方で上位種の反応を調べてみるそうだ。ただ、今週は人手が出払っていて応援は厳しいから、無理に探そうとするな、と」
「そうか……」
「支部長……支部長……? えーっと……あ、もしかしてあの、爽やかイケメン! 名前なんだっけ?」
「柚木、な」
「あー、そうそう柚木さん! 黒神の電話の相手、もしかして柚木さん?」
由紀が尋ねると、勇輝の眉間にくっと皺が寄る。
「…………そうだが」
「アンタ、柚木さんに相当当たり強かったけど、なんかあったの?」
「別に」
「えっ」
結構乱暴な口調で話していた気がするが、あれで何もないというのはあり得るのだろうか。
その後に放たれた由紀の疑問への返答は、いささか理不尽なものだった。
「なんとなく気に食わないというか、裏が読めなくて薄気味悪いというか。生理的に合わない」
「えっそれだけでアレなの? こっわ」
「あとは支部員にはならないと言っているのにしつこく誘ってくるところだな」
「ええ~……それだけであんななる?」
「まあコイツ、冷静そうに見えて直情的に生きてっから。そういう点じゃお前ら似てるよな」
シブキがそう言うと、二人とも間髪入れずに、
「は?」
「どこがぁ⁉︎」
「……いや、そういうとこだろ。全力で否定してくんなよ」




