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第三話「目目連」1/13


第三話「目目連」






 草陰に潜む隻眼が、鋭い爪を突き出して襲いかかる。契約龍の背を狙って飛び出したそれを、勇輝は大鎌の一振りで薙ぎ払った。


「ありがとな、相棒!」

「ああ」


 礼を言いながらシブキが剣を振るうと、彼の目前にいた目玉鬼も地に落ちる。


「それで最後か?」

「おう、多分な」


 シブキの言葉を聞いた勇輝が手に持っていた鎌を放せば、鎌は紫色の光となって消えていく。


 シブキは動かなくなって消滅しかけている足元の目玉鬼を、何か訝しむような顔で見下ろしている。


「シブキ、どうした?」

「いや……妙だと思ってな」

「妙? 何がだ」

「目玉鬼だよ」


 海色の瞳は、消えかけの異獣から相棒へと視線を移す。


「こいつらを率いてんのは百々目鬼だとばかり思ってたが、どうにもそうじゃねえらしい。また別の百々目鬼か、それ以上の異獣がまだ、李渦に潜んでる」

「ああ……そういうことか。単体で留まれない目玉鬼がまだこれだけいるのだから、先日の百々目鬼以外に奴らを繋ぎ止めている何かがいる、と」

「そういうこった。今回の案件、一筋縄じゃいかなそうだぜ」

「ふむ……」


 勇輝は消えていった異獣の跡に目線を落とし、しばらく考え込んだ後、顔を上げてシブキに尋ねた。


「目玉鬼系統に上位種は?」

目目連(もくもくれん)、だな。空間操作型の異獣で、結構厄介なヤツだよ。多分そいつがボスだろうな」

「報告しておいた方がいいか」

「ああ。上位種相手となりゃ増援も欲しいしな」

「わかった。連絡しておく」


 携帯を取り出して耳に当てる相方を尻目に、水龍のサファイアは背後の草むらに当てられる。動揺したように葉が揺れたのと、シブキの口からため息が漏れたのはほとんど同時だった。


「……おい、いるんだろ、出てこい」

「てへへ……バレちゃった?」


 恥ずかしげに笑って出てきたのは、昨日の少女だ。あれだけ派手に告白しておいて、今更何を照れることがあるのだろうかとシブキは内心思ったものの、言えばまた面倒なことになりそうなので黙っておく。


 電話が繋がったらしい勇輝も由紀に気づいたようだが、一瞥しただけで別段言及しようとはしなかった。


「……もしもし。黒神です」

「おい由紀、なんつーとこまでついてきてんだ、オメーは。つーかなんでここがわかった」

「………は? 違いますが。目玉鬼が消滅していないので、上位種が潜んでいるのではないかと……はい、はい」

「んー……乙女のカンってやつ?」

「ハァ……」

「めちゃくちゃ深いため息‼︎」

「お前なぁ、」


 少し強めの口調で呼び掛けたシブキの声色は、呆れているというより諭すようなものに近かった。


「戦闘にまで引っ付いてくんじゃねーよ。危ねーだろうが」

「う……だってたまたま見かけたら戦ってて、戦ってるのカッコよかったんだもん」

「カッコつけたくて戦ってるワケじゃねえの」


 なんとも子どもっぽい思考に三度目のため息が出そうになるシブキだが、喉まで出かかったそれをどうにか飲み込み言葉を続ける。


「いいか? 下手に首突っ込めば死んでもおかしくねーんだぞ。危険だから、これからは戦闘中は見かけても近寄るなよ」

「むうー……」

「……はい、よろしくお願いします」

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