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 シブキの目には二人はそっくりに見えるのだが、どうやら当人たちには全く自覚がないらしい。この前勇輝に似たようなことを言って否定されたのをシブキが思い出したのは、失言をしてしまった後のこと。


「この女のことはどうでもいいとして」

「よーくーなーいー!」


 由紀の反論など目もくれず、勇輝はシブキにのみ視線を向けて話を続ける。


「百々目鬼の反応もまだいくつか確認しているらしい。今は表立って行動してはいないようだが、警戒しておけとのことだ」

「やっぱりか。遅かれ早かれ、もう一度戦うことになりそうだな」

「百々目鬼ってあの?」

「そう、お前を襲ったヤツだ。あいつらがまだ李渦の周辺にいる。気ィつけろ……つってもまあ、どうにかできるわけじゃねーが、せめて俺たちの仕事には構うなよ。また捕まったら俺らが苦労すんだからな」

「ぜ、ゼンショします」

「どうだか」


 相変わらず勇輝の由紀への態度はつっけんどんである。しかし由紀自身、善処すると言いながらも善処できる気がしないので言い返せない。


「……不安なのは確かだな。一応、今日は家まで送ってくぜ」

「えっイケメン……」

「馬鹿言え」


 一瞬ときめいた由紀に、勇輝の冷たい視線が突き刺さる。


「お前だから送ってくんじゃない、危険だから送っていくだけだ。変に期待すると損するぞ」

「うわあ実感こもってる」

「まさか。こいつが誰にでも手を差し伸べるような奴だから、俺はこいつについてるんだ」

「そういう割にアンタは人によって態度変えるわよね」

「お前は猪としてカウントしてるから問題ない」

「せめて人間として数えなさいよ!」


 ここまで不仲だと面白いな、と傍から見ているシブキは思う。仲裁に入るとなれば話は別だが。


 ふと空を見上げると、太陽は西に傾き始めていた。視界の悪い夜になれば戦闘も不利になる。そろそろ帰ったほうがよさそうだ。


「さ、行くぜ二人とも。これも仕事のうち、だからな?」

「うへぇ、そんな強調しなくても」


 へなへなと背筋を丸めながらも歩き出す由紀を、シブキはけらけら笑いながら見守る。勇輝もため息一つついてから、由紀の後を追う。


 茜色の空の下、二人の青年と一人の少女は、草木生い茂る寂れた旧公園を後にした。






 事件が起きたのは翌朝のことである。日曜の朝八時十分、シブキと勇輝がいつもより少し遅めの朝食をとっていた時であった。


 テーブルに置かれた勇輝のスマートフォンが、訴えかけるように小刻みに震えた。


「ん……」

「誰からだ?」


 勇輝は一旦箸を置き、端末の画面を確認する。


「支部長からだ」

「緊急要請かもしれないな。……ああ、食事中とか気にすんな。出ていいぞ」

「わかった」


 律儀に相棒の許可を待ってから、勇輝の指が画面をなぞり、端末を持つ手は耳元へと運ばれる。


「もしもし、黒神です。朝っぱらからなんですか」

「おま……」


 対面で見守っていたシブキの口から、思わず小声が漏れる。低血圧の相棒が朝不機嫌なのは知っていたが、仮にも上司に向かってなかなか尖った電話対応をするものだ。


「…………ああ、例の。わかりました、すぐ向かいます。場所は?……李渦町二丁目三番地……はい」

「ん――待てよ、二の三って」


 勇輝の繰り返した住所が、シブキの中で妙に引っかかった。手繰り寄せるように思考を巡らせる。

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