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「シブキ、早く帰るぞ。決着がまだついていないだろう」

「げ……」

「無視! ってか決着って何!?」

「ブレドラ3」


 ブレドラ3とは、「ブレイブドラグーン」という人気RPGシリーズの最新作、第三作目のゲームの略称である。携帯型ゲーム機対応のコマンドバトル系シュミレーションゲームで、日本のみならず世界中で楽しまれている。ドラゴンを仲間にしながら敵と戦い冒険を進める王道的ゲームだが、キャラクターやストーリーの作りこみ、さらにインターネット通信による充実した対人コンテンツで人気を博している。ブレドラの製作会社であるクオーレソフトウェアは、今や国内に知らぬ者などいない大手ゲーム会社だ。


……まあ、要は。


「……ただのゲームじゃん‼︎」

「何がただのだ、クオーレソフトウェアに謝れ。あとこいつとの対戦をこんなどうでもいい案件で中断させられた俺にも謝れ。やっといい戦いができるようになってきたというのに」

「えっもしかして黒神弱……」

「逆、逆。こいつは相当なガチ勢だぜ。ワールドランキングでも上位陣、昨日念願のトップテン入り果たしてた」

「えぇ……そんなんと戦って楽しい? 勝ち目なくない?」

「レベル合わせてくれてっけどまあねぇわな。コーチみてーなモンだ、付き合わされてんの俺のほうだけど」

「お前の場合攻めが乱暴なんだ。育て方はいいだけに勿体ない。積み技をもう少し上手く扱えるようになれば、国内トップも夢じゃない」

「うわぁホントにコーチだ」

「とにかく!」


 尚も食い下がる由紀に痺れを切らしたのか、勇輝は語調を強める。


「そういうわけだ。俺たちはお暇させてもらうぞ」

「あっちょっと、」


 返事も待たずくるり背を向け、勇輝は相棒より一足先に部屋を出て行ってしまう。


 不満そうに頬を膨らます由紀に、シブキが困ったような笑顔を向ける。


「わりィな、こいつゲームのこととなるとちっと面倒なモンで。またな、由紀」

「――! うん、またね!」


 じゃあな、とか、さよなら、とかではなく。「またな」と、そう言われたのが嬉しかった。


 たった一度の会話で終わってしまうだけの関係ではない、幾度となく言葉を交わせるくらいには、憧れた彼に近づくことができたのだ。その事実だけで、勇輝の素っ気ない態度も、慌てて相方を追い部屋を出るシブキの後ろ姿も気にならなくなった。


 だってそうだろう、また会えるのだから。


「……これからよ、これから」


 待ちに待ったおもちゃを買ってもらった帰り道の子どものような表情で、由紀が笑う。


「ぜーったい、諦めないんだから!」






「……お前もおかしな奴に好かれるものだな」


 呆れた口調で、一階ロビーで待っていた相棒が言う。


「妙に波動の鋭い一般人。しかも猪女だ。あんなのそうそういないぞ」

「そういうお前も十分おかしいけどな」

「言ってくれる」


 青年二人、並んで龍使協会のビルを出る。夕焼けが、頭上に広がる西の空を染め上げている。


「俺はどうにも、変人にばっか囲まれるみてーだ」

「今更。お前の兄弟も変わってるし、そもそも龍使いになる奴なんて変わり者ばかりだし……ああそれ以前に、お前自身が結構な変人だったな」

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