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「…………あの、難しいのは苦手なんです」
「だから言っただろう単細胞。……まあ、お前がいくら阿呆だといえ、波動というのは普通の人間は知らなくて当然だ。とどのつまり、波動は命のことだと覚えておけばいい。……いや、龍使いでもなければ、覚えておく必要性もないか……」
二人の解説も空しく、由紀の頭は一ミリたりとも追いついていない。ぽかんと口を開けて瞬きを繰り返している。
「ハドーは命……」
「どういう字書くかわかってる? お前」
「全然わかりません」
「だと思ったぜ。波が動く、って書いて波動だ。英語だとオーラとかいうやつ」
「オーラ! なるほどわかった気がする!」
「そいつはわかってねーヤツが言うセリフなんだよな」
多分根本的には何も理解していないと思うが、双方これ以上の努力はもはや不毛の域だと悟ったようである。シブキは若干腑に落ちない様子だが仕方がない。
なんとなくわかったようなわかっていないような由紀も、そろそろ興味の対象がずれてきた。
「んで、その……波動適性がなんとかって?」
「長くなるぜ」
「好奇心が勝る」
「勇者だな、おめー」
「蛮勇の間違いだろう」
引く気がなさそうな由紀に、はあ、と気怠げに息を吐いた勇輝が口を開く。
「……龍は人間と違って、波動を視ることができる。波動には色がある。普通の人間の波動は様々な色が入り混じったぐちゃぐちゃな色だ。だが稀に単色の、純粋な波動を持つ人間がいる」
「そいつが龍使い候補、波動適性のある人間ってワケだ。適性のある人間の中で希望したヤツが龍使いになれる。契約の証である龍結晶を扱えるのは、波動適性のあるヤツだけだからな」
「ほえ~……」
波動の話よりは理解できたのか、それともやっぱりわかっていないのか、なんとも曖昧な返事が由紀から投げられる。
しかしシブキたちも、いちいち指摘するのが面倒になってきたらしい。端から三割くらい伝わっていればいい、という気持ちで話している。
「龍結晶を扱う、てことはさ、それ使ってなんかできるの?」
「龍使いはこの龍結晶を介して、契約龍の、俺ならシブキの力を一部使える。遠くにいる契約龍を召喚したり、会話することも可能だ」
「ハイテク~!」
「ま、最近は携帯なんぞが普及してきたから、よっぽど不測の事態や電波の通じねえとこじゃない限り会話にゃ使わねーし、こいつの場合イレギュラーだから俺の龍結晶ほとんど使ってねーけどな」
「イレギュラー?」
「あー……」
微妙な声とともにシブキの瞳が逸らされた。面倒だなという表情である。
対する由紀も、イレギュラーという言葉に探求心が疼いたのは確かだが、同時にまた難しい話だったらどうしようと思ったのも事実だった。
「まあアレだ、その辺の話は波動の話よりめんどくせーし、多分こいつに限ったことだから気にすんな」
「気になるけど複雑なのは嫌だ!」
「じゃあ諦めろ猪。……さて、そろそろいいだろう」
終始ご機嫌斜めだった勇輝だが、由紀の怒涛の質問タイムに区切りがついた隙を逃さず本音をぶつける。もっとも、最初から本音しか言っていなかったような気がしないでもないが。
「数少ない休日を割いてお前の至極くだらない呼び出しに応えてやったんだ。もう帰らせろ」
「いっちいち上からでムカつくし誰が猪よこンの毒舌無表情!」
「おー的確」




