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「……なんだ、アンタら」
単なる直感だ。なんとなく、いい気持ちはしなかった。見知らぬひとに名を呼ばれたシブキは、わずかに眉を寄せる。
「オレたち、この辺に住んでる龍なんすけど、昔は戦龍目指してて。大水龍の二つ名で有名なシブキさん、憧れだったんすよ」
「ちょっとでいいんで、よかったらお話とか聞かせてくれません? こんな機会、滅多にねーと思うんで……」
言いながら、二人の男は距離を詰めてくる。彼らが人でないことは、話しかけられた時から波動でわかっている。
けれど違和感はそこではない。隠してはあるものの、確かに彼らの波動には――悪意が、感じられた。シブキだけでなく、勇輝もそれを感じ取ったようで、訝しげな表情を向けている。
シブキは勇輝を庇うように前に出、目を細めて相手を睨む。
「悪ィけど、俺は芸能人じゃねーんでお断りだ。それにお前ら、本気で言ってねーだろ」
「え? 何のことで――」
「とぼけんな、裏があるんだろ。何が目的だ」
威圧するように低い声でシブキが言うと、龍たちは顔を見合わせた後、その表情を一変させた。
「チッ、ダメか。察しのいい奴はめんどくせェな」
一人がそう言ったかと思えば、もう一人が半袖を着た左腕を、蜥蜴のような鱗と鋭い爪を生やした頑強な腕――龍腕に変化させ、シブキに向かって勢いよく振るう。
シブキは勇輝の手を咄嗟に掴み、後ろに下がってかわす。
「龍魔飛沫。"大獄"の名において、貴様を粛清する」
「さっそくお出ましかよ。けど粛清ってのはいただけねーな、そいつはこっちのセリフなんでね。さっさとお縄についてもらおうか」
シブキと勇輝はそれぞれの武器を手にし、臨戦態勢に入る。
先に動きを見せたのは、最初に攻撃を仕掛けてこなかった方の大獄龍だった。
「蹴散らせ、ダフネアボーグ!」
大獄龍がそう叫ぶと、龍の背後の空間がぐにゃり、と歪む。中から現れたのは、二体の異獣のようなものだった。
それは体長八十センチほどで、微生物のミジンコに似た形をしていた。機械のように見えるが、微弱に波動を放っている。
「シブキ、あれは」
「見たことねえ。何してくるかわかんねーぞ、警戒しろ」
実際に戦ったことがないとしても、シブキは大体の異獣は資料で覚えている。しかしそのシブキでも、大獄龍がダフネアボーグと呼んだその異獣と思わしき存在が何であるかはわからなかった。
眉を寄せるシブキに、ダフネアボーグは二体同時に襲いかかってくる。一体は鋭い棘を生やした右腕を振るって接近し、もう一体は左腕に取り付けられた二つのマズルのような部分から弾丸を発射して攻撃を試みる。
シブキは弾を見切って回避してから、接近してきた方の頭部を斬りつける。手前のダフネアボーグがもう一度斬撃を放つが、シブキは余裕でかわして回転斬りを見舞う。
その一撃で破壊され、ダフネアボーグは煙と火花を散らして動かなくなった。もう一体も、勇輝が"射光線"で貫いて破壊したようだ。
発生した煙幕に紛れて、最初に攻撃してきた方の大獄龍が本性――立派な翼を携えた龍の姿に変わり、刃物にも劣らぬ爪を向けてシブキの方に突進してくる。
しかし戦い慣れてはいないのか、或いはシブキとは格が違いすぎるのか、龍の必死の猛攻をシブキは難なく剣でいなしていく。




