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ヒョウとアクトの強さは、単に腕っぷしがあるとかそういうだけではない。経験によって鍛えられた精神的な強さもまた、彼らの主要な武器だ。いかに平静を保てるかどうかは、戦闘時の判断力のみならず、波動の強さにも直結する。
あの二人であれば、敗北に起因するウェルテクスの迷いを断ち切ってくれることだろう。少し前、アクトがシブキに教えたように。
ウェルテクスの話がひと段落終えると、グレンが思い出したかのように「そうだ」と口を開いた。
「せっかくここで鉢合わせたんだ。勇輝、ひと勝負どうだ」
「どのゲームで?」
ゲーム好きは勇輝だけではなくグレンもそうだ。ましてゲームセンターとなれば、やはりそういう流れになるらしい。
「ブレバト一択。三先で」
「いいだろう」
どうやら少しの間切れていたゲーマーのスイッチが入り直したようで、勇輝は楽しげに口角を上げて返した。
グレンも満足げに頷くと、勇輝の隣の筐体を選んで椅子に座る。シブキたち他三人は、二人の後ろで観戦だ。
「……こいつら、ほんっと好きだな。ブレドラシリーズ」
「まあ、いいんじゃないか。息抜きになるならなんでも」
「日向おめー、ちょいちょい雑だよな」
任務でこそ生真面目なものの、それ以外は割とドライなようだ。彼の契約龍がマイペースなグレン、同期がいろいろと独特な谷北とくれば、ある程度のことは適当に流したほうが楽だという境地に至ってしまうのも無理はない、のかもしれない。
そんなシブキたちの会話を気にする様子もなく、勇輝とグレンは黙々と戦闘準備を進めている。
それぞれが選んだ操作キャラクターは、勇輝が先程CPU戦で使用したのと同じパワータイプの近距離アタッカー、対するグレンが遠距離アタッカー。お互い攻撃特化なのはいかにもらしいな、とシブキはなんとなく思う。
「手加減はしないぞ、グレン」
「当然。そっちこそ、油断するなよ」
始まる前から楽しげに挑発し合い、二人は同時にボタンを押してバトルフェーズを開始する。
ディスプレイに表示された「GAME START」という文字が、戦いの幕を切って落とした。
勇輝の操作する紺色のドラゴンが、グレンの操る橙色の東洋龍に一気に距離を詰める。
グレンが咄嗟にガードの入力をするよりも先に、勇輝によるアッパーカットが決まった。グレン側の、残り少なかった体力ゲージがその一撃で全て削られる。
かち上げられたキャラクターが地面に叩きつけられる頃にはすでに勝負は決まっており、画面中央にでかでかと「KO」の二文字が表示されていた。
先程の試合は四戦目。勇輝の三勝目、ともいえる。決着だ。
「……完敗か。おまえ、格ゲーも強いんだな」
コントローラーから手を離し、グレンはため息をついて言う。負けたものの、どこか清々しそうな声だ。
「ブレバトだけだよ。グレン、お前もかなり強かったぞ。初戦は読みきれなくて取られたしな」
「だが、後半は完全に見切られていた。おれもまだまだ弱い」
お互い満足のいく試合ができたようで、どちらからとでもなく握手を交わした二人は柔らかな笑みを浮かべる。
一方で、観戦していたシブキたちといえば。
「……何がどうなってんのかさっぱりわかんなかったが、終わったっぽいな」




