第十七話「龍獣犯罪組織・大獄」1/9
突き抜けるような蒼穹を、眩い陽光が貫いている。鮮烈な翡翠を纏う木々の葉と、じわりとアスファルトから跳ね返る熱気が、夏の様相を表しているかのようだ。
土曜、午後三時を少し回った頃、活気のある李雨日の大通り。シブキと勇輝はその一角にある、ゲームセンターに訪れていた。
自動ドアが開けば、ガチャガチャとした無数の音が溢れてくる。普段なら喧騒を嫌う勇輝だが、今日は眉を寄せることもなく、シブキより先に店内へと足を運ぶ。
彼に続いて店に入ったシブキが物珍しさに辺りを見渡していると、勇輝が彼の様子を伺うように振り返った。
「悪いな。付き合わせて」
「いや、構わねーよ。前々から行きてえって言ってたもんな、お前」
「ああ。龍使いになってから、あまり来れる機会がなかったんだ」
今日の任務はなし、センリからの依頼もない。たまの休暇にどこか遊びに行くか、とシブキが提案したところ、勇輝の希望でここに来ることになったのだった。
店内を先行する勇輝は特に迷ったりせず、慣れた足取りで店の奥へと進んでいく。一方のシブキは、こういった場所にはあまり来ないようで、大人しく勇輝の後をついて歩いている。
「で、お目当ては?」
「ブレイブバトラーズ。ブレドラの外伝で、アーケードの対戦格闘ゲームだ」
ブレドラ好きの勇輝は、アーケード版もしっかり履修済みらしい。ゲームの話となると少しだけ声色が上がるのも相変わらずだ。
勇輝はブレイブバトラーズの一角を見つけると、左右が空いている席に座り、百円硬貨を一枚投入口に差し入れる。
「お前、格ゲーも得意なのか?」
「いや、やってるのはこれくらいだ。特別上手いわけでもない」
勇輝がよくプレイしているゲームといえば、ブレドラを始めとしたシミュレーションやRPG系が多く、あまりアクションやら格闘やらを遊んでいるイメージはシブキにはなかった。それで意外に思って尋ねたわけだが、やはりブレドラ系列だからという理由で手を出していたようだ。
「さて、アーケードは久々だからな……CPU戦でも挟むか」
勇輝はそう言うと、メインメニューからソロプレイを選択し、難易度を選ぶ画面で迷うことなく最も強いCPUを選択した。
自身の操作キャラクターも選び終え、いよいよバトルフェーズに切り替わると、勇輝はじっと紫色の双眸で画面右側にいる敵の動きを注視しつつ、ボタンの方には目を落とさずにコントローラーの操作を始める。
敵の攻撃がくれば即座に身をひくなりガードするなりでやり過ごし、後隙を見逃さず連撃を叩き込む。その繰り返しで、見る見るうちに敵のヒットポイントを削っていく。
「……上手くねえ、っつってたよな? お前」
「まあ、コンピュータ相手なんでな」
「いや……ぜってえ常人の手捌きじゃねーと思うんだけど……」
もはや感心を通りこし呆れた表情のシブキは、ちらりと近くの筐体を使う別の客を盗み見、それから勇輝の手元に視線を戻す。素人目で見ても、勇輝の手つきの方が明らかに動きの速さが違うのがよくわかる。
結局、第一ラウンドはCPUの攻撃をほとんど喰らわずに勇輝が制した。次のラウンドもさっさと勝利。三回あるラウンドのうち二戦勝てばゲームセットとなるため、CPU戦はそこで終わった。




