12/17
自分の年齢を答える際、少しシブキが躊躇ったように見えた。フォローするように勇輝が割って入ったのもどこか違和感がある。小声でシブキが礼を言ったのも、なんとなく、疑問が浮かぶ。
由紀は気がついてはいたが、特段気に留めないことにした。彼らが(黒なんとかの方は由紀にとってムカつく部類ではあるが)信用に足る存在であることは、ハズレなしの勘のおかげで十分わかっているからだ。
「歳近いね! じゃあ二人とも高校生?」
「勇輝はな。俺はまあ、社会人だな」
「この辺りに住んでるの?」
「ああ。李渦町にでっかい屋敷があってな」
「あ、それ知ってる! あの豪華なお屋敷? あそこシブキくんの家なの⁉︎」
「いや、あそこは勇輝ん家だ。俺は色々あって、居候させてもらってる」
「へぇ、一緒に住んでるんだあ」
由紀の語調にはわずかに羨望の意が滲んでいる。それが勇輝にバレてしまったらしく。
「羨ましいか」
「息をするように煽ってんじゃねーよ」
しかし由紀は好奇心のせいか、勇輝のマウントなど眼中にすら入っていない。もっと興味をそそられる質問が思い浮かんだようで、ぱっと顔を明るくしてシブキに問う。
「じゃあじゃあ、シブキくん昨日帰るときに自分のこと水龍って言ってたけど、あれどういう意味⁉︎ なんとなく嘘とか例えとかじゃない気がしたんだけど、もしかしてホンモノの水神様とか⁉︎」
「――!」
「……ほう。ただの猪かと思っていたが、存外鋭いな、この女」
由紀の問いに、二人の空気が少し変わった。
緊張? 警戒? それとも関心? 意表を突かれたようにも見える。
「あれ……私なんか、変なこと言った?」
「いや、変じゃねぇさ」
そう言いながらも、シブキは何かを思案している。顎に右手を当ててしばらく考え込んだ後、シブキは由紀と目を合わせて口を開いた。鋭いサファイアが貫くように光る。
「じゃあ。俺が本当に龍だ、っつったらお前、どうする?」
試すような言い方だ。しかしその真意までは掴めない。
「どうする、って……んー…………」
ぐっと眉間にしわを寄せ、唸りながら悩む由紀。組まれた腕がぱっと解かれて、由紀が答えを出したのは、それから十秒くらい経ってからのこと。
「カッコいいと思う!」
「……」
「……」
由紀の返答に、二人とも何も言わなかった。シブキは目を見開き唖然としており、対する勇輝はなんとも言えない顔をしている。
「…………さっき、鋭いとか言ったが訂正する。ただの馬鹿女だ」
「なっ!」
「……ふっ、ふはっ……!」
「ちょ、シブキくんまで!」
盛大にため息をつく勇輝の隣で、シブキがけらけら笑っている。由紀は笑われることなど言った覚えがないので遺憾と言いたげだ。
「だ、だってお前、散々悩んだ結果がコレって……くくっ……」
「そんなに笑わなくてもいーじゃん! 大体聞いてきたのシブキくんだし!」
「ははは、わりィわりィ。まあ、お前みたいなバカは嫌いじゃないぜ。けどさすがに、今時小学生男児でも言わねーような返答、予想してなかったわ」
「だって、どうする? って言うから」
「今のが本心で言った言葉なら救いようもない阿呆だな、お前」
「アンタは黙ってて!」




