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勇輝の方はどうにも由紀を馬鹿にしているきらいがあるが、由紀の返答を不快に思ったわけではないらしく、軽蔑の色こそ抜けていないものの先ほどより警戒している様子ではなくなっていた。
とりあえず、あの答えでよかったのだろうか。ものすごく笑われたけど。
不服ではあるものの、二人が警戒を解いてくれたのは、由紀にとって嬉しい進展だった。
「まァ、お察しの通りさ。水龍だっつーのは言葉通りの意味だ。水神なんて高尚なモンじゃあねーけどな」
「じゃあシブキくんはホンモノの龍なんだぁ……! すごいなすごいな、どんな形なの? 今はやっぱり化けてたりするの? それとも竜人的なアレ? 変身とかできる⁉︎」
「いっぺんに質問するな」
不満げに制止する勇輝に、シブキは苦笑いを浮かべている。少々過保護なんじゃなかろうかと、本人も思っているらしい。
「いいって。……俺の種族は純龍族っつってな。強いかわりに龍の姿での消費エネルギーが激しいから、普段は人の姿をとってるんだ。龍型は二足歩行で背中に翼が生えた、西洋龍の形をしてる。人間界じゃ簡単に龍の姿には戻れねぇ。……ところで由紀お前、龍と龍使いのこと、副支部長から聞いてるか?」
説明の途中で投げかけられた問いに、由紀はこくこくと頷く。
「うん、龍使いのことはちょっとだけ! えっと、異獣っていう怪物と戦ってるのが龍使いさんたちなんでしょ?」
「そ。勇輝も龍使い。俺はそいつの契約龍、つまり相棒だな。龍と龍使いがタッグを組んで異獣と戦っていく、ってのが基本なんだ」
「んー……ん?」
なんとなく、違和感というか、何か引っかかるものがあった。右へ左へ、忙しなく首を傾げて原因を突き止める。
違和感の根が見つかった瞬間、由紀は「あっでも、」と口を開いた。
「龍ってさ、やっぱり人間よりずーっと強いんでしょ? なんで人と組んで戦ってるの?」
「確かに龍は、単純な力の差なら人間よりずっと上だ。けどその分、ちょっと暴れるだけで一般市民にまで害を与えちまう。だから人間界へ行くときは自分の力の一部を結晶化して封じる。龍結晶、って呼ばれてる代物だ」
「じゃ、シブキくんは百パーセントの力は出せないの?」
「普段は、な。短期の任務や戦い以外の目的――たまにいる、人間界で暮らしたいっていうような連中は、フルパワー発揮できなくてもさほど困んねーんだけど。俺もそうだが、長期の任務となりゃ、本気でぶつからなきゃいけない相手も出てくる。そういう場合、龍使いと契約して、その証として自身の龍結晶をそいつに手渡すのさ。ピンチになったら、龍使いが龍結晶を砕けば、俺たち龍は本来の力を発揮できる。つってもまあ、すぐ戻っちまうから一時的にだけどな」
「へぇ〜……じゃ、黒神も持ってるの?」
「呼び捨てか、猪女。……持っている。これだ」
そう言って勇輝は、自身の首から下がっているペンダントを右手でつまみ上げて見せる。
金枠に嵌め込まれているのは、縦長で整った形をした八面体の、タンザナイトのような美しい結晶だ。シブキの目の色とよく似た、濃い鮮やかな青色をしている。
「わー、綺麗! これシブキくんのチカラの結晶なんだぁ……すごいね!」




