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「ハァ……。まず由紀、お前の告白に答えなきゃな」
「う、うん」
平静を取り戻したシブキが、凛とした青藍の瞳で由紀を射抜く。
「結論から言うと、わりィが他を当たってくれ」
「えっ……」
あまりにもわかりやすく傷ついた顔をするもので、いくらかは覚悟して答えたシブキもぎょっとする。
しかし彼だって、藪から棒に断ったわけではないのだ。相手に傷つかれようがなんだろうが、言うべきことははっきりと言わなければならない。
「俺とお前は昨日あったばっかで、まだロクに話もしてない。互いのことをよく知らないのにノリだけで付き合うってのは、俺ァ好きじゃねぇんだ。……それにな」
ここまではあくまでシブキの感情の問題である。もっと重要なのはこの後だ。
「俺とお前とじゃ住む世界が違う。俺たちは、昨日お前を襲ったようなバケモンを、毎日相手にしてんだ。人の死体も見たことねーようなヤツを、こんな危険な世界に巻き込むワケにゃあいかねえ」
「…………そう」
小さな声とともに俯いた由紀。シブキの経験上、こういう勢いのある女は簡単には引き下がらないし、ともすれば逆ギレさえしてくるものだが、予想に反してしおらしい反応だ。しかし。
(――いや、待て。違う、これは)
ただしょぼくれているわけではなさそうである。勇輝もそれには気づいていた。シブキと勇輝の予想はこの直後、見事的中することになる。
「じゃあ、」
バッと上がった由紀の顔には、悲しみだのなんだのというマイナスの感情は宿されていなかった。
「お友達になってください!」
「……不屈の精神かぁー」
なんかもう、どうでもよくなってきた。そんな思いが間延びした声に滲んでいる。この手の輩は大体、押そうが引こうが効果はない。潔く諦めた方がいい。これもシブキの経験則である。
「ごめんなさい、いきなり恋人は突然すぎたよね。でも友達ならいいでしょ、ね?」
「オメーとんでもなくポジティブだな」
「ただの馬鹿だろう」
「アンタとは友達になりたくないわね!」
「言ってろ。俺から願い下げてやる」
「あーはいはい喧嘩はやめてくれめんどくせぇ」
どうにも勇輝と由紀、相当馬が合わないらしい。実質初対面でここまで対立できるのももはや天晴れだ、などと俯瞰的に思うシブキだが、この二人のややこしい喧嘩を仲裁するのはもう御免被りたい。
「まあ俺は構わねぇよ、もう。お前殺しても死ななそうだし」
「それ褒められてる?」
「褒められてねーよ」
「そうなの? ところで友達記念にいっぱい質問していい? シブキくんもさっき言ってたけどさ、仲良くなるにはまず知ることからでしょ?」
「余計なこと言って墓穴を掘ったな、シブキ」
「うっせー。……由紀、聞きたいことがあるなら聞け。答えられるのは答えてやるよ」
「やったー!」
この女、滅茶苦茶に元気である。
さっきあれほど落ち込んだ様子を見せたくせに、切り替えがあまりにも早すぎる。これをお友達にするには、だいぶ骨が折れそうだ。
「えっとじゃあまず、シブキくんと、そっちの……黒…………黒なんとかは何歳? 私十六なんだけど歳近い?」
「黒神勇輝だ田村なんとか」
「田村由紀ですー!」
「もう好きにやっててくれお前ら。勇輝は十七だ。んで俺は……」
「十八。十八だ」
「……おう、サンキューな勇輝」




