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「ワクワクだけで終わればいいがな」
楽しげな声で言う御神楽に、勇輝はさらっと不穏なセリフを放って席を立つ。そんな勇輝に内心震えながらも、御神楽と由紀は先行するシブキたちについていく。
「まずはポルターガイストから見ていくか。生物室だったよな、御神楽」
「うん。この階にあるし、一番近くていいかも」
「ああ。それに多分、危険度も低い」
とつ、とつと足音を鳴らして廊下を歩きながら言うシブキに、御神楽は首を傾げた。
「危険かどうか、わかるの? もしかして怪異系詳しかったり? あっ、仕事って、実は祓い師とか――」
「違う違う。……いや、怪異っつったら、相手にしてんのはまあまあ怪異だが、エクソシストとかじゃねーよ」
まあ、側から見れば妖怪退治に見えなくもないが、恐らく御神楽が想像しているであろうものとは相当異なるだろう。
「なあ勇輝、お前も大体見当つくだろ? ポルターガイストといえば」
「……ああ、アレか」
「そ。ピアニストの方もなんとかなるだろ。問題は階段と、『蝋燭さん』ってヤツだよ」
話している間に、四人は生物室の前に到着した。御神楽と由紀に一歩下がるよう指示し、シブキと勇輝が扉と向かい合う。校長に許可を得た際預かった鍵を鍵穴に差し込んで回し、戸を開けて薄暗い生物室の中へ。電気をつけても、何かが起こる気配はない。
「さて。どうくるかな」
「なんにもない……みたい、だけど」
躊躇いがちだが好奇心が勝ったようで、御神楽と由紀も後から入ってくる。
そんな二人に、勇輝が呆れた眼差しを向けた。
「お前たち、無用心に入ってきてよかったのか?」
「え? でも、何も起きなそうだよ」
「……まあ、この程度の瘴気には気づけないか」
勇輝は小さくため息をこぼし、――不意に、御神楽の手首を掴んで自分の方に引き寄せた。驚く御神楽の頭の後ろを、何かが風を切って飛んでいく。
「……え」
「なになになになに⁉︎ 何! 今の!」
「ハサミだ。『ポルターガイスト』だよ」
勇輝が指を指した先は、入ってきたばかりの扉がある壁の方。その下に、生物室に備え付けられた実験用のハサミがひとつ、落ちていた。
飛んでくるハサミに数秒早く気がついた勇輝が動いていなければ、今頃それは壁ではなく、御神楽のこめかみを刺していただろう。
「お前ら、あんま動くなよ! 勇輝! 二人を頼む!」
「わかった。行ってこい」
シブキは三人をその場に残して、部屋の奥、実験器具が閉まってある棚へと向かう。拒むように、次々とメスシリンダーやら顕微鏡やらが飛んでくるが、シブキはそれを全て見切り、かわすなりキャッチするなりしながら進む。
「ったく、よく視ろ。俺は視える種族だぜ、小鬼ども」
言いながら、シブキは実験器具が入った棚の前――一見何もない空間に、迷いなく踵落としを見舞った。すると何もなかったはずのそこに、小さな球体が現れる。攻撃は直撃した。
伸びてしまったそのまんまるい何かは、目玉鬼とよく似たシルエットではあるが目玉も鉤爪もなく、かわりに裂けた大きな口と、触腕の先には人のそれに似た形の、物を持つことに特化した手を有している。
消滅していく小鬼を見ながら、後ろの方で由紀が縮こまる。




