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そう告げると、御神楽は一度大きく息を吸い込んで――雰囲気たっぷりに、話し始めた。
「……黄昏時の生物室は、死者の国と繋がっている。入ってしまったが最後、実験器具がひとりでに浮かび上がって……びゅん! と風を切り、縄張りを荒らしに来た者を襲ってくる!……ってね。ハサミが飛んできて手を切った子もいるんだ。今回は、擦り傷で済んだけど……ね」
「ひえ……」
シブキの後ろから情けない声が聞こえた。由紀である。
「……光輝お前、こういう話するの上手いんだな」
「そう?」
「空気感が妙にそれらしい」
「へへ、これでも文系だからね!」
勇輝に褒められて――これは褒めていると言っていいのか、絶妙に怪しいところだが――満更でもない顔をする御神楽。単純だ。
一方のシブキは顎に手を当てて、聞いた話を脳内で整理していた。
「ポルターガイスト、怪我人も出てる……か。勇輝、こいつは俺らの出番かもしれねーぞ」
「そうだな。光輝、放課後少し付き合ってくれないか? その怪異、調査したい」
一般人を巻き込むのは忍びないが、こればかりはしかたがあるまい。協会もまだ情報を掴んでいない以上、噂を知っている者に頼らざるを得ない。それに、御神楽であれば、シブキと勇輝の本性を明かしても問題ないだろう。
勇輝の頼みに、御神楽は二つ返事で了承した。
「いいよ。そろそろ予鈴鳴っちゃうから、他の三つは昼休みにでも話すよ。ほら、田村さんも遅れちゃうよ?」
「えっ!……あっ、ほんとだ! やっば!」
黒板の上、壁にかけられた時計が示すのは――八時二十五分。ホームルーム十分前である。
「じゃあ私はこれで! あ、放課後一緒に行っていい⁉︎」
「まあ、校内ならお前も無関係とは言えねーし、構わねーけど……」
「やった! じゃねシブキくん、また放課後!」
忙しない動きで由紀は去り、階段を駆け降りていく。廊下を走るな、という大人の声が聞こえて、シブキは苦笑いを浮かべた。
「……行っちまったよ。騒がしいヤツだなあ」
「それはそうと……シブキ。七不思議とやら、やはり異獣が関わっていそうだな」
御神楽が席に戻ったのを確認して、勇輝は声を潜めてシブキに言う。
「七つもねーけどな。ま、ただの噂じゃねえなら、十中八九異獣の仕業だろうよ」
雨の振る窓を、シブキの海色の瞳がじっと睨む。
「俺らがいる以上、好きにはさせねーさ」
それは彼の主義であり、プライドでもあるのだから。
シブキはこの時点で既に、聞き耳を立て、こちらの様子を伺う男――谷崎斗真の奇妙な視線に、気がついていたのであった。
放課後。昼まで降り続いていた雨は止み、わずかに切れた雲間から夕焼け空が顔を出す午後四時頃。
今回、シブキと勇輝はこの学校の生徒としてではなく、龍と龍使いとして動いている。シブキが休み時間のうちに校長に話を通して、調査の許可、及び校舎からの人払いを頼んでいた。その甲斐あって、今は生徒たちもほとんど残っていない。
二年二組の教室で、シブキ、勇輝、御神楽の三人がしばらく待機していると、二階から由紀が合流してきた。それを確認して、シブキは座っていた席から立ち上がる。
「全員揃ったな。んじゃ、行くか」
「放課後に学校の怪異調査……なんかワクワクするよね!」




