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「そんなわけで! お仕事あった日に、私からセンリさんに聞いたら教えてくれたよ」
センリの助手でいつ呼ばれるかわからない立場である以上、シブキと勇輝は何かあったら話すように言われている。今回の勇輝の怪我も伝えていたので、それをセンリが由紀に話したのだろう。
「……口止めできる相手じゃないな」
かったるそうに首の後ろを掻く勇輝の顔には、これ見よがしに心底面倒だと書いてある。何せ相手はセンリだ。由紀に情報を流さないように言えども聞かないだろうし、無理やり押し通そうとすれば一番弟子を名乗るヒビキが黙っていない。こんなくだらないことであの二人を敵に回すほど、黒神勇輝は馬鹿ではない。
情報の経路は把握した。続いて勇輝は、未だ不安げな様子の御神楽に向き合う。
「俺の傷はもう治ってる。気にするな」
「そっか。ならいいんだ。無理はしないでね」
その言葉に勇輝が頷くと、御神楽はようやく安心して頬を緩める。
心配事がなくなると、御神楽の興味は別のところに向いた。
「そういえば、センリさん、って誰? 探偵助手とか言ってたけど……」
「あー。鳴神千里、李雨日の探偵だよ。色々物知りな人でさ。聞きたいことがあって訪ねたら、まあ……なんつーか、勢いで俺ら三人、まとめて助手にさせられたっつーか」
我ながら奇怪な話であると、シブキは内心でせせら笑う。どうにも脈絡のない話だが、これが全て事実なのだから世界とは恐ろしい。
さすがにこれは信じまい。そう思いながら横目で御神楽を見ると――予想外。彼のかけた眼鏡のレンズ越しに、好奇心で輝いた瞳が見える。
「すごいじゃん! ねえ勇輝、いつの間にそんなカッコいいことしてたのさ!」
「いや、割と最近だ」
「そうだったんだ。にしてもすごいなあ、探偵助手かあ」
そう言って御神楽は妙に感動した様子で目を閉じる。生真面目な青年という印象を抱かれがちな彼だが、結構少年らしい一面もあるようだ。
「じゃあ、君たちならアレも解決できちゃうかもね」
ふと、御神楽はそう言った。果たして何のことだか、見当もつかないシブキと勇輝は顔を見合わせる。
「アレ……っつーと?」
「あ、そっか。ちょうど休んでたから聞いてないんだね。最近、李高で話題になってる噂」
「噂?」
噂話と聞くと、あまりいいイメージがない。訝しげな顔の勇輝に、御神楽はこくりと頷いた。
「そ。李渦高校七不思議、なんて言われて話題になってるよ。まあ、七つもないんだけどね」
「ねーのかよ……」
「噂だからね。……でも、その怪異に出くわしたり会おうとして、怪我した人もいるって話だよ」
その一言で、シブキと勇輝のスイッチが切り替わった。これはどうにも、ただの噂で片付けられる話ではなさそうだ。
聞きたい? と御神楽がいたずらっぽく尋ねれば、二人は揃って肯定を返す。
「有名な話は四つ。その一、『生物室のポルターガイスト』。その二、『無人のピアニスト』。その三、『異次元の階段』。そして四つ目、『蝋燭さん』。全部、生徒が少なくなってきた放課後、夕方に起きてるらしいよ」
「なるほどな。詳しく教えてくれ」
「もちろん。じゃあまずは、『生物室のポルターガイスト』から、ね」




