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【現代バディバトルファンタジー】Spla Brave   作者: 南河天狼
Chapter.4「ノコギリソウ」
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   3/9

「僕にはできるんだよ。ようこそ、僕の世界へ」


 シブキの独り言に返事をしたのは、シブキと同じ声。しかしそれが、シブキに化けた影踏み鬼の――アキレアの声であることは明白だった。音が不自然に反響して、方向は特定できない。


「テメェ、どっから」

「さあ。どこだろうね?」


 からかうような音色でアキレアは返す。耳で拾うこともできなければ、闇しか映らない以上目を頼りにすることもできない。アキレア本人の空間である以上瘴気は充満していて、波動視も使い物にならない。


「まあ、そう焦るなよ。少し話でもしよう」


 警戒を絶やさないシブキに対し、アキレアの言葉は一見軽薄だ。腹の読めないセリフに、シブキの剣を握る力が少し強くなる。


「君たちは――人間、幻獣、そして龍という生き物は、どうにも排他的で身勝手だ。これは在るべきもの、在るべきではないものと勝手に決めつけて、自己本位な物差しで他者(僕ら)を測ろうとする」

「どういう意味だ」

「そのままの意味さ。頭の堅い君にはわからないかな」


 構わず語るアキレアの声が、そこで途切れた。そして――次の声は。


「これは、除け者たちの聖戦だ」


 真後ろから、聴こえた。


 咄嗟にシブキは振り向き、アキレアの奇襲を受け止める。


「聖戦、だって……? こんなテロじみた虐殺の、どこが聖戦だってんだ」

「それを言うなら君たちも同じだ。それとも君は、龍のする殺しは正しくて、異獣のする殺しは間違っているとでも? 異端者は抵抗もせずに殺されてろって? そんなのは御免被るね」

「……ンな都合よく捉えちゃいねえよ、俺だって」


 アキレアの剣を弾き、シブキは後退して距離をとる。


「俺もお前らも、本質はなんら変わりゃしねえ。戦いに正義も悪もねーよ」

「なら、」

「けど」


 シブキの剣の切っ先は、真っ直ぐにアキレアの方へと向けられた。


「俺にも、守らなきゃいけないもんがある。例え手を汚すことになろうとも」


 正義なんて、結局は意見の押し付けだ。そんなこと、シブキはとうの昔に理解している。


 理解した上で、それでも戦わなければ守れないものがあると、幾度となく思い知らされたのだ。


 それは、きっと。目の前の異獣も、同じことなのだろう。


「……はは、君はそのたちか。立場が違えば、仲良くなれたのかもしれないのにな」


 全員が全員、ただ盲目に、異獣というものを悪と決めつけて戦っているわけではない。


 これは結局、正義の戦いでも、聖戦でも、テロでもない。


 それぞれの種の、生存競争の延長に過ぎないのだ。


 和解ができるならそれがいい。けれどこの世界の仕組みは、異獣という存在が望まずとも放つ瘴気は、そんな甘ったるい考えを容赦してはくれない。


「どこまでいっても、僕らは敵同士だ。僕が異獣(仲間)の方が大事なのと同じで、君もそうなんだろう。そうだ、だから僕は、()()()()したのだから」


 ここまで、というのが一体何のことを指しているのか、察するのに時間はかからなかった。アキレアの纏う瘴気が、強く、濃く、変化していく。


「ああ……でも少し、残念だな」


 黒い煙となって具現化した瘴気が、アキレアを覆っていく。その黒煙に紛れて、シブキの顔をした一匹の異獣は、ひどく哀しげに笑った。

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