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"メイルストローム"をギリギリで逃れた一体のシニガミコウモリは、結界陣に弾かれたのちに抵抗する間もなく渦に巻き込まれ、そのまま溺れて消滅した。
残り二体はかろうじて渦から抜け出したものの、翼が濡れてフラついている。一旦距離を取ろうとするその隙を、シブキと勇輝は許さない。
一体はシブキの剣に、もう一体は勇輝の鎌にかけられて、呆気なく消滅していった。
脅威が去ったのを確認して、シブキは相棒の方に駆け寄る。
「勇輝、怪我は?」
「かすり傷だ。毒もほとんど食らってない。もう抜けてる」
そう言って勇輝は波動の鎌を消失させ、右腕を上げてシブキに見せる。震えは治まっているようだ。
「はー……ヒヤっとしたぜ」
安堵の息を吐き、シブキはほっと胸を撫で下ろした。
そこへ、少し離れたところでシニガミコウモリ二体の相手をしていたアクトと錦が合流する。
「俺たちも終わった。二人とも、よくやりきったな」
「こっちこそ助かりました。兄さんもありがとな」
「おう、気にすんな。……にしてもオマエら、ホントに強くなったモンだなァ!」
アクトは心底嬉しそうに声を上げた。そんな兄を見上げて、シブキはいつもより少し不器用に笑う。
「兄さんに言われたこと、ちゃんとできたぜ。俺」
「だからオマエならできるっつったろ? 胸張りな、オレの自慢の弟なんだからよ!」
言いながらアクトはシブキの頭に手を伸ばす――が、いい加減察したシブキはさっと身を引く。
「兄さん、今日はもういいだろ」
「ッハハ、クセだなこりゃ。相当頑張ってたんだ、今回は勘弁してやらァ」
空を切った右手をひらひらと舞わせ、アクトは楽しそうに笑みを浮かべる。つられるように、シブキも眉を下げて笑った。
その様子を視界の端に捉えながら、錦が勇輝に声をかける。
「黒神。少し見ていたが、お前もいい動きだった」
「見ていたんですか……」
アクトと錦の実力であれば、たかがシニガミコウモリ二体にそこまでの時間がかかるはずがないのだ。どうせ戦闘が終わっているなら助けてくれても、とでも言いたげに、勇輝はじとっと錦を見つめる。
「もちろん、本当に危ない状況ならすぐさま加勢していたさ。だがあれほど戦えているなら、助ける必要はないと判断した。無駄に守ってばかりいるのも、お前たちのためにはならんからな」
「結構スパルタですね、副支部長」
「甘やかして死なせるよりはずっといい。……それとも、あの程度でも危険だと判断した方がよかったか?」
濡羽色の左目が、月明かりを反射して意地悪く光る。挑発的なその言葉に眉を寄せる勇輝を見て、錦は穏やかに笑った。
「冗談だよ。実際、できると思ったから任せたんだ。……黒神、お前は強いさ。自信を持っていい」
本心なのだとはっきりわかるほど、確固とした声で錦は言う。勇輝はわずかに瞳を丸くして、それから噛み締めるように目を細め、緩く口角を上げた。
「ありがとうございます」
たった一歩かもしれない。きっと、目指すものにはまだ遠い。
それでもこの一歩は、大きな前進だ。
彼らの行先を照らすように、頭上の月は明るく輝いていた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
また一つ成長したシブキと勇輝の姿、いかがだったでしょうか。
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次回はいよいよ、上位種異獣との戦闘が始まります。お楽しみに!




