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違う。金属音とは似て非なる音。生き物の鳴き声だ。それで勇輝は、昼間の柚木とのやりとりを思い出し、鎌を握りなおす。
曇り空に影が落ちて、十匹のシニガミコウモリが二人へと飛びかかってきた。
シブキと勇輝はさっと横にかわして牙と翼の刃を逃れたが、シニガミコウモリは二人をぐるりと囲むように展開する。
「厄介だな、この数は」
「どうにかなりそうか、シブキ」
「ちょっとキツいな。……俺らだけなら、の話だけど」
シブキは不敵な笑みを浮かべ、通りの反対側に目を向けた。そちら側から、空を切って苦無が二本、シニガミコウモリ目がけて飛んでくる。
二体のシニガミコウモリの片翼に、苦無がそれぞれ突き刺さった。かと思えば、一陣の黒い風が吹き――苦無の刺さった二体を、真っ二つに裂く。アクトの居合斬りである。
「無事か、オマエら!」
「助かったぜ、兄さん!」
シニガミコウモリたちも黙ってやられるわけにはいくまい。仇を討たんとコウモリたちは襲いかかる。
シブキは自分の方に向かってきた二体に回転斬りを見舞う。一体は回転に巻き込まれて刻まれたが、もう一体は巻き起こった風圧で吹き飛ばされた。飛ばされた一体に向けて、シブキは左手を向ける。波動が手のひらに集中する。
「"ドライブフロウ"!」
集まった波動は高圧の水流に姿を変え、真っ直ぐ発射されてシニガミコウモリを撃ち落とす。飛ばされたシニガミコウモリの方へ一足先に駆け出していた勇輝が落下地点で待ち構え、勢いよく鎌を振り上げて撃破する。
鎌を振るった後の一瞬の硬直を狙って、別の個体が勇輝に刃を向け飛びかかった。勇輝は寸前で反応して"射光線"で牽制し、シニガミコウモリの波動の中心部である頭部を鎌で砕く。
これで残りは五体。うち二体はアクトと錦が相手をしている。
しかし、シニガミコウモリは勇輝にできた隙を見逃さず、三体で一斉に襲いかかった。今の彼は孤立している、上に。
(――まずい)
気がついたのはシブキだ。ただ孤立しているだけだというのならばまだいい。だが、応戦しようと構えた勇輝の様子がおかしい。彼の利き手である右腕が、微かに痙攣している。先ほど返り討ちにしたシニガミコウモリの刃が掠り、微量ながらも毒を食らったのだろう。
一瞬の隙、ほんのわずかなアクシデント。戦場においては、そういう小さな石ころひとつが、ひとの命を左右する。
シブキはすぐさま相方の元へ駆ける。それなりの距離がある上、シニガミコウモリの飛行速度はなかなかに速い。迷っていれば、悩んでいれば、間に合わない。
それでも。今日兄に教えられたことを、シブキは忘れてはいなかった。
シニガミコウモリの牙が勇輝に届く前に、シブキが勇輝を庇うように割り込む。
けれどそれは、盾になるためではなく。
「"メイルストローム"ッ!」
シブキを中心に発生した渦潮が、飛び込んできたシニガミコウモリを絡めとる。それと同時に。
「波動術――"結界陣"!」
教えを得たのはシブキだけではない。迎え撃つ気だった勇輝も、右腕の異常とシブキの乱入を受け、咄嗟に守りに転じた。




