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噛みつくように否定したシブキだが、アクトに遮られる。
「本気で死ぬ気で突っ込んでンなら、今すぐヒョウも呼びつけて説教コースだ。そうじゃねェなら落ち着いて聞きな」
まだ少し納得のいっていない様子のシブキだが、やや圧のある兄の声に口を閉ざす。
「つまり、だ。オマエは誰かを庇うとき、その後の行動がまったく見えてねェ。守るってことしか考えてなけりゃ、そりゃ攻撃モロに喰らうわな。かわすのが無理でも、少しでも軌道を逸らすとか、それすらしようとしねェのはそういうことだ」
一言ずつ強調して、まるで諭すような言い方でアクトは話す。それでシブキも、ハッと気づいたような顔で兄を見上げる。
やや厳しかったアクトの表情が、ふっと緩んだ。
「やっとわかったみてェだな、シブキ」
「……考えなしに突っ込んでたんじゃ、ボロボロになって当然だよなあ」
「そ。一手先を見ろってこった。簡単なことじゃねえが、今のオマエならできるはずだぜ」
確信を込めて笑うと、アクトは竹刀を構え直す。
「そんじゃ、続きといこうか」
「おう!」
威勢のいい返事とともに、二人の勝負が再開された。
決着がついたのは、一進一退の攻防がしばらく続いた後のこと。
アクトが繰り出した突きをかわして、シブキは横薙ぎで反撃した。なかなかの反応速度だったが、アクトはギリギリまで引きつけてから姿勢をぐっと低くして回避し、そのまま前進してシブキの後ろに回り込む。
シブキが攻撃の動作を終えたのと、首筋にそれが触れたのはほぼ同時だった。
「一本」
静かな兄の声がそう告げる。アクトの竹刀は、剣先でしっかりとシブキの頸動脈を捉えている。
「……参りました」
シブキが敗北を認めると、アクトは竹刀を下ろして満足げに口角を上げる。
「よし、まだアニキとしてのメンツは保てるな」
「当分及ばないよ。俺は全力だったけど、兄さんはまだ余裕あるだろ」
「オマエが思ってるよか本気だったぜ? 手ェ抜いて負けりゃあカッコつかねェからな」
勝敗が決まったのを見てこちらへ歩いてくる龍使い二人を横目で確認しながら、アクトは言った。
「にしてもシブキ、少し見ねェうちにまた強くなってんなァ。気ィ抜いてらんねェや」
「頑張らないと、追いつけない兄貴がいるからさ」
「ッハハ、そりゃ光栄だ!」
声を上げて笑い、それからアクトはふと穏やかな表情を浮かべた。
「まだ第二にゃ及ばねェが、オマエなら必ず上がってこれる。シブキ、焦らなくていい。自分のペースで頑張れよ」
シブキが返事をするより先に、アクトの左手がまたシブキの頭を撫で始める。
「ちょっ……兄さん、さっきもやったろ、それ!」
「オレが勝ったんだからいいだろ? 減るモンじゃねェんだし」
「俺の神経が減る……!」
「気のせい、気のせい」
「……おいアクト、そのくらいにしてやれ」
見かねた錦が呆れた口調で促すと、アクトはぱっと手を離す。存外素直だ。
「そうだな。んじゃオレ、竹刀片付けてくるわ。シブキ、オマエの渡せ」
あっさり引き下がったと思えばコロッと話を変えたアクトに、シブキは若干の困惑を見せながらも竹刀を渡す。二本の竹刀を抱えて倉庫へ向かったアクトの後ろ姿は、そこはかとなく機嫌がいい。
「切り替えはっや……あんなんだったか、アクト兄って」




