6/12
錦の家は代々龍使いであり、忍者の家系でもある。錦に忍の動きと忍術を伝授した彼の祖父・聡一は、アクトの前の契約者だ。アクトの目には、今は亡きかつての相棒と今の相棒の姿が重なって見えたらしい。
「似てきたって、動きが?」
「それよか教え方ってか、熱の入り方がちっと似てンだ。ま、聡一は慎也と違って、教えんのヘッタクソだったけどな!」
思い出して笑い声を上げて、それからアクトは穏やかな表情で錦を見守る。
「感慨深いモンだぜ。あんなちっこかった慎也が、今じゃ立派な副支部長だ」
「年寄りくさいこと言うなよ、兄さん」
「アイツらからすりゃオレらはかなりの年寄りよ。それにシブキ、オマエだって思うことあるだろ? 勇輝にさ」
「あー……」
言われて、シブキはそっと目を閉じる。
シブキと勇輝の関係性は少し複雑だ。ただの契約者でも、ただの相棒でもない。
十二年前、異獣に壊されたとある集落。そこでシブキが助けたのが、まだ幼い勇輝だった。
子どもだった頃の彼と今の彼を比べれば、どうしてもアクトと同じような言葉が出てきてしまいそうだ。
「それ言われちゃ、言い返せないな」
「だろ?」
悪戯っぽく笑うアクトに、シブキは困ったように眉を下げて笑んだ。
「ったく、人間ってのは、とっととデカくなっちまうモンだぜ」
温かくも少しだけ寂しさが混じった声で、闇龍はぽつりと呟いた。
一時間ほど経過した頃、錦は動きを止め、ぱんと手を叩いて「この辺でいいだろう」と言った。それを合図に、勇輝は糸が切れたように臨戦体勢を解き、疲れた様子で膝に手をつく。
「お疲れさん、勇輝」
シブキが近づいて声をかけると、勇輝は肩で息をしながらシブキの方に首を向ける。
「…………お疲れ」
「ヘタな任務よりよっぽど息上がってんじゃねーか」
「副支部長を甘く見ていた……」
ようやく呼吸が整ってきた勇輝は、膝から手を離してゆっくりと上半身を起こし、左手で額の汗を拭う。
一方の錦は、勇輝と大して変わらない運動量だった上に厚着をしているにも関わらず、まるで涼しい顔をしている。そんな錦の肩に、アクトがぽんと手を置いた。
「慎也オマエ、だいぶ熱くなってたなァ」
「正直、俺も黒神がここまで根性あるとは思ってなくてな……。まったく音を上げないものだから、少し熱が入りすぎた」
「……いえ。このくらいでちょうどいいです」
わざわざ錦の言葉を否定した勇輝の目は、まだわずかにギラついている。それを見て、錦は表情を和らげた。
「自信を持て。お前は強くなるぞ、黒神。だが、あまり根詰めすぎるのは逆効果だ」
「はい」
向上心が高いのは結構だが、度が過ぎればすぐに潰れてしまう。焦っていては、できることもできなくなる。
さて、龍使い二人による訓練は終わったわけだが、まだシブキとアクトの用は済んでいない。中央へやってきたシブキたちと入れ替わるように、錦は訓練場の端の方へ歩き出す。
「じゃあ、俺たちは横で見ているぞ」
「ああ。慎也、お疲れ」
会話を交わしながら錦から竹刀を受け取ったアクトは、同じく勇輝の竹刀を手にしたシブキと距離を空けて対峙する。
「じゃ、オレらも久しぶりに手合わせといこうか!」
「おう! よろしくな、アクト兄!」




