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谷北と日向が失ったもの。故郷と、家族と――それともう一つ。
養育学校時代、二人と同い年の同期がもう一人いたと聞く。
――その少年は、任務の中で命を落としたのだと。
(こんな仕事だ。仲間が死ぬなんて珍しいことじゃねえ、けど)
その辛さは、悔しさは、シブキもよく知るものだった。
シブキもまた、戦友を亡くしたことは幾度となく、ある。数えていれば何かが壊れてしまいそうなほどに苦しく、けれど鮮烈に焼き付いては消えない、きっと癒えることはない無数の心傷。
なかでも強く憶えているのは、母親の死と、それと。
……思い出すだけ馬鹿らしいと思った。どうせいくら悔やんでも、誰一人戻ってはこないのだ。
(できることなら、勇輝には――)
「シブキ」
聞き慣れた声で名を呼ばれる。シブキは暗くなってしまった顔を上げ、努めて明るく返事をした。
「おう。おかえり、勇輝」
しかしこの相棒は勘のいいもので、むっと訝るように眉を寄せて近づいてくる。
「……また、小難しいこと考えてたんじゃないだろうな」
「まさか。大したことじゃねーよ」
「ならいいが」
納得こそいっていないようだが、これ以上の詮索は無駄だと判断したのだろう、勇輝は深く追及しようとはしなかった。代わりに意識を逸らそうと視線を彷徨わせ、数瞬の間を置いて、彼は由紀が置いていった紙袋に目を留めた。
「そういえばそれ、何が入ってるんだ」
「あー……まだ見てなかったな」
思い出して、シブキが紙袋に手を伸ばす。封を開けると、何やら洒落たケーキの箱が入っていた。箱の中にはレアチーズケーキとチョコレートケーキがひとつずつ。




