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「第三階位まで上がれるヤツはそういねえし、いてもほとんどはベテランだ。シブキさんほどの若さでここまで上り詰めるってのは、相当すげえことなんだぜ」
「おめーは俺のこと買い被りすぎな」
「そうでもないだろう」
興奮気味に話すウェルテクスを制したシブキだったが、援護射撃とばかりに発せられた勇輝の一言にそっと目を逸らす。面倒だと言いたげな動きだ。
しかし勇輝には、微塵も気にする様子はなく。
「お前は才能でも偶然でもなく、努力で上がってきたんだ。充分誇っていい」
「そうそう! イイこと言うじゃねーか、勇輝!」
「おめーら二人揃ってなあ……」
妙に息の合った二人の誉め殺しに、シブキはいよいよ困ったというふうに眉を下げた。
「事実っすよ」
それでもウェルテクスは相当の自信があるといった面持ちで断言し、それから由紀の方へ向き直る。
「シブキさんが第三階位に上がりたての頃は、若えのに実力あんのかって言ってたヤツも多かったんだ。オレだって半信半疑だった。けど、初めて同じ任務に当たった時、シブキさんの戦いっぷりを間近で見て、すげえひとだって思ったんだよ」
「それで敬語使ってるんですね!」
「そういうこと」
由紀が納得して手を叩くと、ウェルテクスは満足そうに肯定した。彼の斜め後ろに控えている谷北も、感心したというように頷いている。
この場でどうにも腑に落ちていないのはシブキだけである。褒められ慣れていないわけではないが、こういうのは不得手だ。気恥ずかしさと多少の居心地の悪さを感じて、それを悟られたくない一心で大げさにため息を吐く。
「ったく……俺より強い龍なんて山ほどいんのに」
「あ、それってシブキくんのお兄さんとかのこと?」
苦し紛れに零した言葉は、幸いにも由紀の注意を引いたらしい。好都合と思いながらもシブキは話題を転換させる。
「そんだけじゃねーけど、確かにヒョウ兄みてえな第二階位は別格だな。第一階位は特例だから、実質第二が最高階位だし。戦龍の中でも特別強くて、信頼度も高いのが第二階位だ」
「そうなんだ。シブキくんよりすごいのって、なんか想像つかないなあ」
「そりゃ、お前は俺と勇輝の戦闘しか見てねえしな。兄さんたちの動きは異次元だぜ」
「ヒョウさんも大概っすけど、それでもシブキさんがすげえってことには変わりねえ。オレがシブキさんに惚れ込んだってのは、そういう意味さ」
注目を逸らしたかったのがウェルテクスにはバレていたのか、露骨に話を引き戻された。意地でも褒めちぎりたがる後輩に観念して「そろそろいいだろ」と本音をぼやくシブキを横目に、由紀の瞳が羨ましそうに輝く。
「へぇ〜……なんかかっこいいな、そういう関係!」
「そうかぁ……?」
疲れた声でシブキが返したのと被さるように、着信音が部屋に鳴り響いた。音の出所は由紀のポケットだ。
「…………あっ」
「お前じゃねーの? 由紀」
「実はこの後、佳純に勉強教えてもらう予定だったんだあ……」
「……お前来てからもう結構経ってると思うけど」
由紀は恐る恐る部屋の壁掛け時計を見上げる。由紀が黒神邸の玄関ベルを鳴らしてから、優に十五分は経過している。
「ごめんシブキくん、私そろそろ帰るね!」




