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「俺やウェルみたいな戦龍には、階位ってのがある。戦龍っつーのは異獣と戦うために組織された、人間で言うとこの軍人みてえなもんだ。戦龍じゃない、異獣と積極的に戦わない龍は、便宜上第六階位ってことになってる。センリさんたちがいい例だな」
「龍でも、みんなが戦うってわけじゃないんだね」
「ああ。戦うことは強制されてない。憧れる子どもは多いけど、実際にその道を目指す奴は少数さ」
「ま、命捨ててるようなもんっすからねえ」
ふとウェルテクスが呟いた一言に、勇輝と由紀の表情がわずかに強張る。
「……あれ、オレなんかヘンなこと言ったか?」
「人聞きが悪いってことだろ……。死に急いでるみてーな言い方すんなっての」
シブキにとってもあまり都合のいい話題ではなく、少しもどかしそうに首を横に振った。
「ウェルが言うみてーに、戦龍ってのは命懸けの仕事だ。けど勘違いすんなよ。俺らは生き残るために戦ってんだから。……あと、ウェル」
二人を安心させるため強めに釘を刺した後、シブキは自分より少し背の高いウェルテクスに耳打ちをする。
「由紀はあくまで一般の人間、しかもまだ子どもだ。勇輝だって、記憶を失くしてからは身近な人の死を経験してない。あんまり刺激しないでやれ」
「あー……ちっと不躾でしたね。すみません」
随分と甘いことを言っているという自覚は、シブキにもあった。それでも、今の二人にこうした話題はあまりにも酷だ。
ウェルテクスもただならぬ雰囲気を感じ取ったようで、反論せずに引き下がる。自分たちがやってくる前の応酬など知る由もないが、何か複雑な事情があったのだということは、ウェルテクスや谷北にも想像できた。
「……で、階位の話だが」
ぱん、と谷北が手を叩く。泡が弾けたような軽快な音で、三人の間に張られていた緊張の糸も緩んだ。癖の強い話し方の割に、彼は存外周りを見ているようだ。
「六の位は先程水龍が述べた通りだな。続いて、五の位は……」
「あーいい、いい! オレが説明するわ!」
谷北が回りくどい解説を始める前に、食い気味にウェルテクスが割り込む。
「第五階位はアレだ、見習いってとこだ。ある程度強くなれば、第四階位以上の龍の同伴を条件に実戦経験も積める。確か、シブキさんとこの末っ子くんも第五でしたよね?」
「あー……ライトか。そうだな。咄嗟の判断とかは、とっくに俺以上だけど」
少し上の空でウェルテクスの説明を聞いていたシブキだったが、弟の話を振られるとやや明るい声音に変わった。
それで由紀たちの緊張も完全に解けたようだ。由紀は興味深そうに顔を上げる。
「弟さん?」
「おう。二人いるうちの下の弟だよ。経験こそ少ねえが、バトルセンスは天才だ。手合わせする度に強くなってて、いつ抜かされるかわかったもんじゃねえ」
そう話すシブキの声はどこか自慢げだ。それを見た由紀も嬉しそうに笑った。
「弟さん、大事なんだね」
「まあな」
楽しげに浮かべられた笑顔は本物だった。その表情に、由紀だけでなく勇輝も内心で安堵を覚える。
「……っと、ちょいはしゃぎすぎたな」
ふと我に帰ったシブキは誤魔化すように咳払いをした後、階位の話題に注意を戻す。
「第五の次が第四階位だ。ウェルはここだな。第五階位で経験を積んで、試験に合格した奴が第四階位になれる。人間との契約もできるようになって、一人前の戦龍として扱われるのはこっからだ」




