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「確かにアンタは嫌なやつだけど悪いやつじゃないし、シブキくんのことだって誰よりも支えてる。それに、みんなのために戦ってるのはシブキくんだけじゃなくてアンタもでしょ。言っとくけど私ね、どんなに嫌いでも頑張ってるやつにざまあみろって言えるほど嫌味じゃないから! アンタと違う! から‼︎」
「どこまでも馬鹿正直だな……」
「人が心配してんのにホントなんなのアンタは」
一向に口の減らない勇輝に、由紀もいよいよ呆れた顔になる。それならばとっとと用事を済ませてしまおうと思い立ち、持ってきた紙袋を勇輝に渡そうと手を伸ばす――が、勇輝はくるりと背を向けた。
「まあいい。上がれ」
「へ?」
「何間抜けな顔してるんだ。シブキに会いに来たんだろう」
今度は由紀が目を丸くする番だ。あの気難しくて独りよがりな勇輝が、こうもあっさりと入室を許可するなど、思ってもみなかったのである。
「……黒神が出てきたから、てっきり追い返しにきたのかなと」
「俺もそこまで嫌な奴じゃあないんでな。気が変わったんだよ」
にや、と意地の悪い笑みを浮かべて、からかうようなトーンで勇輝が言う。
「ええ……気が変わったって何? こわっ」
「ああ、帰りたいなら勝手に帰っていいぞ」
「帰るわけないでしょー! お邪魔します!」
律儀に挨拶をした由紀は勇輝に続き玄関に上がって靴を脱ぎ、用意された来客用スリッパに履き替える。それから、廊下の先の景色をざっと見回して。
「広っ! 外も大概だけどものっすごい豪邸じゃん!」
「まあ、元は地主の家だからな」
「ひえー、お坊ちゃんじゃん……全然育ちいい感じしないのに」
「お前に言われる筋合いはない」
いつも通りの応酬を交わしながら、二人は歩を進めて広間に出た。内装は外装から連想されるような、少しシックな雰囲気の洋館だ。広間の左右には別室に繋がる長い廊下が、中央には二階に続く階段が設置されている。
テレビでしか見たことのない風景に感動している由紀の横で、ふと、勇輝が小さな声で呟いた。
「……正直、限界を感じていたんだ。あいつを支えるには俺一人じゃ足りないんじゃないかと」
「え?……なにいきなり、怖いんだけど」
「真面目な話だ。シブキのことだよ」
階段の前で立ち止まったまま、勇輝は由紀へと振り返る。どこか見覚えのあるような表情だった。ちょうど――由紀が目目連に攫われた日の別れ際、相棒の傷つく顔は見たくないと言った、あの時と同じ顔。
「シブキくんの……」
「今ここで話しておきたい。本人には、あまり聞かれたくないからな」
声を落として勇輝がそう告げ、由紀はまた目を丸くした。
「なんか意外。コソコソするのとか嫌いそうなのに」
「嫌いだがそうも言っていられない。お前が思っているより、ずっと深刻なんだよ」
「深刻……って、シブキくんの体調のこと?」
「それもあるが、違う」
勇輝は首を横に振って静かに否定する。無意識のうちだろうか、彼の右手の指先は、ペンダントに嵌められたシブキの龍結晶に触れている。
「俺もあいつも、向こう一週間は自宅療養を命じられてはいるが、あくまで休みが必要なだけだ。シブキの身体もだいぶ再生しつつはある。問題は精神状態だ」




