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【現代バディバトルファンタジー】Spla Brave   作者: 南河天狼
Chapter.3「鳴神探偵と李渦の主」
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   8/10

 でも。だからって、迷いもなく。


 目目連の触手が、水龍の肉を抉って離れていく。力が抜けて崩れ落ちた相棒の体を、勇輝は後ろから受け止めて支えた。


「シブキ! おい、しっかりしろ!」


 相棒の悲痛な叫びに、シブキは薄く目を開けた。口を開いても声が出ない。


 彼の苦痛を想像する時間すら、今の勇輝には許されていない。次の行動を考えなければならなかった。


 少なくとも息はある。生きている。龍だから核がやられなければ再生できる、大丈夫だ。わかっている。焦ってはいけないとわかっている。


 それでも心臓の奥から湧いて出る焦燥は、勇輝の平静を確実に奪っていく。


 そこに。


「勇輝くん」


 もう一匹の水龍ーー水神の、凪いだ声が飛ぶ。


「波動強化、頼む」

「…………ッ、はい!」


 一目連への返事は震えていた。それでもここで挫けてはいけない。ここで自分が凛としていなければ、シブキを余計危険に晒すことになる。


 ようやく、勇輝の理性に心が追いついた。


 目目連は先ほどの攻撃で相当な隙ができている。第一波よりも触手のスピードが速かった。であれば硬直時間も長いはずだ。この隙を逃せば、勝機はないと思うべきだ。


 揺れる波動を必死に制して。持てる全てを、一目連に託せ。


「最大出力――波動術、"精神隆起(せいしんりゅうき)"‼︎」


 言葉に呼応し、勇輝の術によって強化された一目連の波動が大きく波を打つ。それは一匹の龍とは思えないほどに濃く、強く、荒々しいものとなる。


 殺気にも似た強烈なそれを纏う一目連の青い瞳は、言い表せない義憤を湛えていた。


「……いい波動だ。これなら私は、お前に負けない」

「チィッ……‼︎」


 ようやく動けるようになった目目連が、攻撃の予備動作を見せる。


 一目連も溢れる波動を集中させる。


「"嵐影湖光(らんえいここう)"」

「殺レ‼︎」


 目目連の触手が、再度放たれた。


 しかしそれらが触れる寸前、一目連の波動は荒波の如く大きく拡張する。触手はその勢いに負け、押し返されていく。


 ついに水神の波動は目目連の領域の壁を()()し、それを上回る強靭な結界として展開された。


「貴様、何ヲ……!」

「簡単さ。貴様の領域を()()()した」

「瘴気ノ領域ダゾ、ソンナコトデキルワケ、」

「ないさ、ああ、できるはずがない。なかったんだ。だがな」


 その声は、ひどく静かに落とされた。


「――怒っているのだよ。私と()は」


 指で指されなくとも、視線を受けずとも、「彼」というのが誰であるのかは明らかだ。


「さあ、在るべき場所へ還るがいい。――"水刃(すいじん)蓮華往生(れんげおうじょう)"」


 瞬間、結界の床として張り巡らされた波動の水が波紋を広げる。


 そしてちょうど、目目連の足元から、巨大な蓮の花のかたちをした水柱が現れ、足掻く間もなく目目連を呑み込んでいく。それは鋭利な波動の刃へと変化し、内部に閉じ込めた獲物を切り刻んだ。


 一目連が結界を解く。元の河川敷の風景が、勇輝の視界に戻ってきた。


 これで終わりかと誰もが思ったその時、しぶとく生き延びた異獣による、悪あがきの一撃が迫る――が。


 触手は勇輝には届かず、シブキの剣に斬り落とされた。相棒に支えられたままの姿勢で、ほとんど回復していないボロボロの状態で、それでも瞬間的に反応したのだ。

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