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「今回も私ひとりで倒すつもりでいた。それで目目連の捜索をセンリ殿に依頼したところ――"狂化"の話を聞いたのだ」
「じゃあ、それで俺たちに?」
察したシブキの問いかけに、一目連は肯定を返す。
「ああ。"狂化"現象は、私が現役の頃は発生していなかった。センリ殿は、"狂化"した上位種異獣と戦ったことがあり、かつ一度目目連を退けている君たちのこと教えてくださった。それで協力を頼んだのだ。君たちとであれば、全盛期をも越えた目目連を倒せるだろうと思ってな」
確信のこもった言葉に、シブキは少し気恥ずかしそうに笑う。
「足、引っ張っちまうかもしれませんけど。全力で頑張ります」
「俺たちも、目目連を取り逃した悔いがある。一目連さんの協力、心強いです」
二人が各々出した決意の声明に、一目連の隠れていない左目が柔らかく細められた。
「よろしく頼むぞ、二人とも」
見守るような穏やかな一目連の調子は、どこかセンリにも重なるところがある。
そこでふと、シブキの中に疑問が生じた。正確には前々から気になっていて、結局聞きそびれていたことだ。一目連ならそれを知っているだろうか。
「そういや……センリさんって、いつから李渦にいたんです?」
「私がここに赴いた時にはもう、センリ殿とヒビキ殿はいらっしゃったよ。お二方はあまりご自分の話をされない故、詳しいことは私にもわからない」
……余計、謎が深まっただけだった。センリに至っては種族も不明のままだ。
けれど彼らは悪人ではないし、過度に詮索する必要もないだろう。好奇心は一旦抑えて、シブキはひとまずそう割り切ることにした。
数分後、勇輝が通知音に気づいてポケットから携帯を取り出した。珍しく、電話ではなくメッセージアプリだ。送信相手は案の定、ヒビキである。
「読み上げるぞ。……『目目連の居場所がわかった。"狂化"しているから気をつけろ。位置は以下の通りだ』」
メッセージを読み終えた勇輝は、シブキと一目連に端末の画面を見せる。
ヒビキから送られてきたのは地図の画像だ。マーキングされている場所は、神社から三キロメートルほど離れた河川敷だった。
「少し遠いな。近くにタクシー乗り場がある。河川敷付近の道の駅まで乗っていこう」
「そうですね。……にしても、やっぱ"狂化"してんのか」
最初からわかってはいたことだ。しかしやはり、いざ現実となると身構えてしまう。
"狂化"した角獣は相当な強敵だった。グレンが無理を押して戦闘に復帰していなければ、最悪大敗を喫していただろう。もっといえば、シブキとグレンの渾身の一撃を喰らってなお、角獣は消滅しなかった。角獣は撤退したに過ぎないのだ。戦う力を十分に残したまま。
懸念はそれだけではない。角獣を退かせた張本人である、八岐大蛇。奴が今回も介入してくるのだとすれば。或いは――今回はもっと、最悪のかたちで介入してくるのだとすれば。
そんなシブキと勇輝の不安を察した一目連は、神妙な面持ちの二人にあえて笑いかけた。
「言っただろう。君たちとであれば倒せると踏んだ故に、私は君たちを呼んだのだ」
それはやはり、確信に満ちた声で。水神の穏やかな言葉は、それでいて力強い波のように、二人の恐れを押し流していく。




