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いつもより幾分か饒舌に語るシブキを見かねて、勇輝が彼の肩に手を置く。
「あ……悪い、熱くなっちまった」
勇輝の静止ではっとしたシブキは、一度咳払いをして落ち着きを取り戻した。
「すみません、俺、一目連さんに憧れてたもんで……。名乗ってもいねえのに盛り上がっちまって」
「構わない。背を追ってもらえるのは嬉しいことだ。少々、気恥ずかしさもあるが」
一目連はシブキに優しく笑いかける。
「君たちのことはセンリ殿から聞いている。水龍の龍魔飛沫くんと、契約者の黒神勇輝くんだったな。抜群の連携だと、ヒビキ殿も褒めていたよ」
言いながら一目連の視線はヒビキへと向かうが、ヒビキはぷいと目を逸らしてしまう。その様子に、「素直でないのう」とセンリがにやけながら呟いている。
苦笑を浮かべ、一目連はシブキに向き直った。
「特に、シブキくん。君の噂は、龍界にいた時から耳にしていた。若くして第三階位にまで上り詰め、一部からは敬意を込めて『大水龍』と呼ばれている、と」
「それこそ過大評価ですよ。俺なんてまだまだだ」
憧れの龍から褒められ、シブキは少しむず痒そうに眉を下げた。
「そんなことはないさ。ヒビキ殿に認められる龍はそういないぞ。……それに」
ひと呼吸置いた一目連が、どこか懐かしそうな目でシブキを見る。
「君の母上……龍魔水月は、私の同期でもあったからな」
「――母、ですか」
そこで、シブキの声のトーンがわずかに下がった。
「ああ。彼女は私などよりもずっと優れた戦龍だった。私の知る限り、一番の水龍だ。君が彼女の息子だと聞いて、ずっと気になっていたんだよ。結局、彼女とは話す機会がないまま、私は引退してしまったのだがね」
「……俺は、母みたいに立派な龍じゃないですよ」
シブキは困ったように笑ってそう返す。その声がどこか苦しげだと気がついたのは、彼の相棒である勇輝と、察しのいいセンリだけだった。
彼は母を目の前で亡くしたことに、今でも負い目を感じているのだ。
「母は確かに強い龍でした。俺なんてまだ、足元にも及ばないです」
「経験は覆せない。ミツキが短い生涯の中で駆けてきた戦場の数は、常軌を逸していたからな。焦る必要はないさ。君は彼女と同じものを持っている」
シブキの言葉が己への皮肉であると勇輝は気づいていたが、一目連は単純に実力不足への悩みだと受け取ったようで、穏やかな声色のまま続ける。
「君の波動はとても優しい。君は、誰かのために動ける龍だ。ミツキもそうだった」
「――そう、ですかね」
裏表のないまっすぐな言葉は、時に深く刺さることがある。シブキにとっては一目連の一言がそれだったのかもしれない。
少し不安定に揺らいでいたシブキの波動が、落ち着きを取り戻した。
「……なるほど」
二人のやりとりを見守っていた勇輝が、ぽつりと零す。
「あ……? 勇輝お前、なんだいきなり。『なるほど』って」
「いや。お前が一目連さんに憧れた理由がわかった気がしてな」
「そりゃまあ、一目連さんはすげえけど……」
「……はあ。まったく、ベタ惚れだな」




