91.久しぶりの王都
一月以上離れていた王都、相変わらず活気に溢れ、人だけではなく獣人も多く歩いており、多種族国家であるオーディン王国の王都らしい雰囲気に落ち着く。
大通りを抜け、貴族街の外れにある屋敷に行くと、門番が相変わらず警戒をしている。敬礼を受けて門を抜けると庭は整備され、多くの花が囲まれた中心でサーシャとイノがお茶をしていた。
二人とも貴族の淑女にしか見えない綺麗なドレスを身につけ、側仕えを従えている。こちらに気付いたのか、少しこちらを向き直る。
「その人は?」
久しぶりに会ったことすら大した要件ではない。貴族の夫婦関係など基本的にこんなものだ。まだ婚約者で夫婦ではないのだが。
「元海賊、サーシャの配下にでも自由に使って欲しい」
「そう。 それなら盗賊狩りや罪人狩りのときに連れて行こうかしら」
物騒な事を言うが、メアリはサーシャの下で働けば良い。
「それと資金が居るのでアースドラゴンを狩ってきて」
戻って早々アースドラゴン狩りに行けと言われるとは思わなかった。しかしここ一月以上何も稼いでいない。
貴族の生活には金もかかるが、領地を持たない以上独自で稼ぐしかない。本当に正式な貴族になるには相当無理があるのではないだろうか。正騎士として国家に仕えれば、相応の爵位に合わせたそれなりの報酬が出るのだが、ただの冒険者で爵位も無い
正騎士になれば最低限騎士爵は与えられるが、この屋敷を維持するのには足りないだろう。
「数日後で良いだろうか。 戻ったばかりで離れていた間の状況を理解したい」
「一月以内に用立てして。 それで事足りるから」
「わかった」
その日はそのまま用意されている自室に戻り、久しぶりに落ち着いた睡眠をとることが出来た。少なくとも屋敷である限り、町や村の宿屋で止まるより精神的に落ち着いて眠ることが出来た。
翌朝、朝食を済ませたあとラクシャが大鉈を見せてきた。
「鉈も壊してしまった。 修理を頼んでいいか」
合金で作られている刃が酷く欠けてしまい、竜骨近くまでひび割れが達している。武器同士で打ち合ったにしては余りにも損傷が酷い。
「これは、作り直すのと変わりませんが、何かありました?」
「この剣と打ち合った」
ラクシャが亜空間倉庫から取り出した折れた剣、折れた箇所以外刃に欠けは無く剣の異常性がはっきりとわかる。
「鉄の剣でこんなことに?」
鑑定の魔方陣が描かれている布を広げ、中央に剣を置いて調べ上げる。
タイプ 折れた神剣
付与 強靭・耐久・鋭利・硬質・修復
状態 破損品
特性 神剣
委細 神剣とも言える加護と付与を与えられた剣。精密に配合された鋼鉄で作られミスリル合金以上に強度がある。
情報が読めるのは色々記憶が戻ってきている事と、鑑定能力の向上だろうか。
なんにせよこの武器が異常なのは確かだ。鉄を溶鉱炉で溶かし、出来る限り丁寧に作ったとしても所詮は魔法や手作業、科学的に数ミリグラム単位で成分調整された代物には劣る。
それが目の前の剣は成分が安定した鋼鉄、ミスリル合金よりも強固だという。
その辺の鋼鉄よりはマシな合金の大鉈とはいえ、ミスリル合金と同等となると話は別だ。竜骨であったが故に折れてはいないが。しかしこの鋼鉄はこの世界において科学的に合成された鋼鉄を作るのは不可能なもの、これは転移者の能力だろうか。だとしたら転移者が居るのは神聖王国となるが、戦争状態にあるため密入国をするくらいしか方法が無い。




