92.新しいブレーカー
「大鉈の修理は明日にでもしておきます」
「あぁ、頼むよ。 他の武器で代用しているけど、もろくてしかたない」
ラクシャはそう言うと肩を竦めながら部屋に戻っていった。この武器も扱いにくい代物ではあるけれど、それでも充分なほど頑丈な点だけは他の武器よりも優れている。どうやら気に入ってくれているようだ。
翌日、用意されていた作業部屋で大鉈を調べなおす。設備も揃っており、こういった気回しの良さが貴族とその有能な側仕えらしいところだ。
状態を調べるとアースドラゴンの骨に傷は無く、分厚い合金がなんとか耐えてくれていたようだ。魔石を一旦取り除き、合金を溶かしなおし一から作り直す。砕けた部分を埋めたところで強度は戻らず、作り直す以外方法が無い。
ひと工夫としてアースドラゴンの牙の量を増やし、先端を細くし重心を若干手元に近づける。これで新しい竜の大鉈は出来上がった。また戦ってどうなるかはラクシャ次第だろう。
四日後、出来上がっているだろう新たなブレーカーガントレットを受け取るため、機構術士のもとを尋ねた。
「いらっしゃい。 出来上がってますよ」
店に入るとすぐに裏に案内され、限界まで大型化したブレーカーガントレットが置かれていた。
腕につけることは出来ず通常は背負い、使うとき両手で保持して使うほど大きくなっている。ミスリル合金製の杭は腕ほど太く、機構部分は直径30cmにもなる。両手で持ってみるが随分と重い上に2mほど巨大な機構になった。これならアースドラゴンの鱗ごと一撃でしとめることができそうだ。もはやガントレットとは言えない代物だが。
「売れているのか?」
「まったくですね。 お客さん以外には見向きもされません」
実際扱いにくさは酷い物だが、一撃に関してはこれ以上のものはない。売れる必要もないため、技術的にはこのまま消え去った方がいいだろう。残りの支払いを済ませ、王都のダンジョン最下層に向う。
まさか長い旅をしてようやく王都に戻り、一ヶ月も経たずにアースドラゴンと戦う事になるとは思わなかったが、新しいブレーカーの実用試験には丁度良いだろう。
王都ダンジョンに潜り二日、最下層に到達すると騎士達が護る門が見える。
「挑戦者か? 無事を祈る」
騎士達の間を抜けて扉を開くと、大型のアースドラゴン、50m級がこちらを見ながらたたずんでいる。
何度もダンジョンに産み出される魔物はこちらを覚えていることなど無い。このアースドラゴンもまた、一月以上前に倒したものとはまったくの別の存在、こちらの手の内など何も知らない。
まずは先手を打つ。
「《アヴァランチ》」
雪崩を作り出しアースドラゴンに向けて放つ。視界を塞ぐ雪崩に身を隠しながら接近、背負ったブレーカーを両手に握り、アースドラゴンの右前足にブレーカーを解き放つ。爆発音と衝撃が全身に響き、血が噴出しアースドラゴンの右前足が引きちぎれその巨体が地面に倒れる。




