83.ドワーフの国 ウルツァイト
坑道を抜けた先はドワーフの国。右を見ても左を見てもドワーフ、豊富な髭を蓄え、筋骨隆々とした者達ばかり。
坑道から産出される鉱石を取り扱った店や、鍛冶工房の多くが大通りに
どの店も互いの技術を競い合っているのか、安く売られている剣でさえ、オーディン王国やミリシア帝国で売られている剣より品質が良い。
「久しぶりに戻ったんじゃが、相変わらずだのぅ」
蒸気機構が発達し、大地から噴出す蒸気口にはなんらかの機構が取り付けられ、歯車やピストンが作動している。これが今のドワーフ国の動力源で技術の粋なのだろう。
「さて、約束どおりその背中の物を見せてもらおうかの」
「しかし、他の連中に見せるのもなんだ。 酒場ではなく貸し鍛冶場に行こうか」
「それがいい。 役場にいってくる」
貸し鍛冶場なんてものがあることに驚いたが、アグルは役場に赴くと何かを申請し、案内された貸し鍛冶場に移動した。
鍛冶場の大きな机の上に、背中に背負っていた魔導帥の魔剣を置く。
「ふむ」
フルガネ達は真新しいグロープを着けると、丁寧に剣を持ち上げ眺めている。約束どおり眺めるだけだが、それでも何か得るものがあるのか、光に反射させじっくり調べている。
一時間近くじっくり眺めた後、丁寧にテーブルに置き、満足そうな笑みを浮かべている。どうやら用は済んだみたいだ。
剣を受け取り背中の鞘に収める。
「ふむ、創作意欲が湧いてきたわい」
「鉄は熱い内に打てだな」
「ワシが鉱石を買い込んでくるぞ」
こちらがすでに目に入っていないのか、鉄を打つ準備を始めだした。ドワーフとしての性なのか、何よりも鉄を打つ事が好きなのはかわらぬようだ。
「ここまで、お世話になりました」
ここまで来るための仲間、短い間でも背中を預けるに心配の要らない人達だった。でも、それもここまで。
「また縁があればな」
「達者でな」
「坊主も元気でな」
ドワーフ達は名残惜しそうなそぶりもなく、紙にあれこれ書き込んでいる。頭の中は鉄と鍛冶と酒というが、邪魔をしないように鍛冶場を出る。
ここから王都に行くつもりではあるが、その前にこの国に居るはずの転生もしくは転移者を探し出す必要がある。
「エル、リーアナ。 気配はないか?」
二人とも目を瞑り、何か集中しているようだ。数分して目を開くと首を振った。
「一つ、随分感じ取りにくいけどあります」
「うーん。 たぶん北西方向だと思う」
北西、となるとウルツァイトの首都方面になる。これから進むとなると数日はかかりそうだが、役目を話すため、また転移者を探し出さなければいけない。




