82.地下坑道 国境の村
坑道に入って一週間、ここを超えれば、地下大坑道内とはいえドワーフ国の領土となる。
地下坑道とはいえ、国境ともなると物々しい作りになり、ミリシア帝国の兵士が巡回警備をしている。
国境となる門の横には複数の検問所があり、グループごとに審査が行われているようだ。
順番に自らの番になるのを待ち、リーダーとなるフルガネが出国理由を伝える。あとは各自の荷物を簡単に調べられ、私も持っていた奴隷の書類を提出、奴隷は国家の財産である。持ち出すならそれ相応の金品の支払いが必要となる。
「84万フリスです」
それがメアリ・バーンズの奴隷としての価格。犯罪奴隷であるため、器量が良くても価格が抑えられているようだ。支払いを済ませ、無事国境を越える。
物々しさがあったミリシア帝国側と異なり、ドワーフ側となると獣人も多く活気に溢れていた。どこもかしこも鉱夫姿の人達が歩き回り、積まれた鉱石が詰まれて荷車が多く置かれている。
兵士が巡回しているミリシア帝国側とは凄い違いだ。
「よし、あとはウルツァイトまで一直線じゃな。 今日はここで一休みしていくぞ」
ドワーフだらけの国境の村、長く日の無い坑道の中にいるため昼夜の感覚はないが、酒場ではすでに多くのドワーフが酒を飲んでいる。フルガネ達も今夜の宿を決める前に飲むつもりらしく、各々酒場に向っていってしまった。
「食べ物を買いに行きましょう」
「もうパンだけはこりごり。 ちゃんとしたものが食べた~い」
エルとリーアナは坑道で食べている干しパンに飽きているようだ。正直私も他のものが食べたい。
「ハチミツも余りないし、買い足しておこうか」
活気のある露店や商店をまわるが、どの店も虫やキノコばかり、甘味どころかそれ以外の食べ物も見かけない。酒の種類こそ豊富ではあるのだが、とてもドワーフの国らしい。
「うーん、素材屋も行ってみようか」
さすがに私も違う物がどうしても食べたいのだが、どこにも見当たらない。露店や商店ではなく、薬などの素材を売る店なら、もしかしたら何かあるかもしれない。
道沿いにある素材屋に入ると、薬草やポーションの素材が置かれている。ただ、やはり小麦やハチミツなど、調合に使われるものが置かれていた。
「すみません。 小麦二袋、ハチミツを一瓶、牛乳にたまごをください」
「1万2000フリスだよ」
高い。いや確かにここまで運ぶしか手に入れる方法がないのだから、高くて当然だが相場の20倍というのは驚きだ。
購入して宿屋に戻ると、自室で調理を始める。専用の道具など無いが、代わりに鍛冶魔法で素材を持ち上げ、粉にして混ぜて叩いて伸ばして焼いて、パンケーキもどきを作り上げる。
久しぶりに味わう虫とキノコと干しパン以外の食事、余りいい出来とは思えないが、出来立てにハチミツを掛けると良い匂いが漂ってくる。
「やわらか~い!」
「私にはもう少しハチミツを下さい」
久しぶりのまともな食事に、エルとリーアナも満足してくれているようだ。
それにしてもドワーフは栄養素さえ満たせれば、あとは酒さえあれば良いというのだが、その辺は慣れる気がしなかった。




