77.同行者
ドワーフのマカスと酒を浴びた翌朝
「よし、後2人ほど仲間を見繕うとしようか。 昨晩は言い忘れたが、ワシはドワーフのマカス・ダ・ドラグマ。 ウルツァイトまでは宜しくな坊主」
160cmくらいの背丈しかないので、見上げるように話しかけてくるが、それでもずっと年上のドワーフの戦士、持っている斧は極めて大振りでやはりパワーファイターなのがよくわかる。
「よろしくおねがいします」
「まずはギルドの酒場にいこうか。 ワシとおなじドワーフも二三人くらいいるだろうからな」
いわれたとおりギルドに入ると、併設された酒場に一人のドワーフが飲んだくれていた。
「なんじゃアグルだけか。 他の奴らは仕事にでちまったかの」
テーブルまで歩いて行くと気付いたのかジョッキ片手にこちらを向いた。
「マカスか。 他の奴らなら依頼があるとかで行っちまったぞ」
他の依頼を受けて出払ってしまっているらしい。それにしても、マカスよりもさらにごつい腕をしている。単純な腕力だけでみたら、やはりドワーフは充分に脅威。
「まぁいいわい。 一旦国に戻るから面子を集めるぞ」
「帰郷の念でも沸いたか?」
「こいつを見りゃ、国に戻ってで触ってみたくなるわい」
マカスに肩をつかまれ、しゃがまむと背中の剣を向けさせられた。その剣を見るなり目の色が変わり、ジョッキをテーブルに置くと剣をまじまじをみている。
「ほ~、もちろんワシも見ていいんだろうな?」
「えぇ、まぁ王国に入ってからですが」
「あと一人はワシの伝手をあたろうか。 恐らく教会にいっとるじゃろうからな」
アグルは椅子から立ち上がり、軽く身を動かす。
やはり飲んではいても酔ってはいないようだ。ドワーフの酒の強さには本当に驚く。鬼人族は酒で酔うのを楽しみにしているが、ドワーフ余り酔わず、酒が命の水と言い切ることはある。
「神殿? まさかあの老いぼれか?」
「老いぼれはマカス、お主じゃろうが。 いつもの日課だ」
なにやら話が進んでいるようだが、あと一人も早々に見つかってくれるならそれに越したことは無い。
ついてこいと言う言葉に従い、着いた場所は多神教の教会だった。神聖王国とはことなり、あらゆる、それこそ邪神まで崇める多神教の教会は歪とはいえ、信仰によって争いを起さないという現れでもあった。
「お、いたぞ。 おい!」
火の神 イフェスティオの神像の前で熱心に祈るドワーフ、白髪の混じるほかの二人より年上に思える。
「やかましぃわい! 祈っとる時くらい静かにせんか!」
教会内に響き渡る大声に反射的に耳を塞いでしまう。
「大体おぬしら! ドワーフなのに神に祈らんとは信仰が足りんぞ! 日々祈りを捧げて鉄を打つのがドワーフの本懐じゃろうが! 酒を食らって斧を振るってばかり何やっとるか!」
なんというか古風なドワーフらしい。
それにしてもドワーフは信心深くて日々祈りを捧げるなんて初めて聞いた。
「フルガネの爺さんもこれをみりゃ気分も変わるってもんよ」
また肩をつかまれるとしゃがまされ、背中を向けさせられる。
素早く目の前まで走りこんでくると、両肩をつかまれその場に座らされる。
「……若造共が言う訳もわかるわい。 で何を約束にしたか一枚ワシにもかませろ」
武器に目がないのは老いても変わらないようだ。
マカスとフルガネは何かはなしをしているが、時折拳骨と雷が落ちている。どうやら上下関係ははっきりしているようだ。
10分ほどして話が付いたのか、疲れきっているマカスとアグルをしり目にこちらに向き直る。
「だいたい話は分かった。 ワシらがウルツァイトまで一緒に行こう。 ただしその剣はじっくり見させてもらうぞ」
「えぇ、約束ですからかまいません。 ただ溶かしたり研いだり叩いたりは止めてくださいよ」
「わっとるわい!」
大声で話すのが癖なのか、一言一言が大きく耳に響く。
「すぐに準備して向うぞ。 お前らもいつまでもじっとしとらんで準備をせんか!」




