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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
2章 各領地への遠征開始
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76.酒とドワーフ

 不機嫌そうな表情だとは思うのだが、ドワーフというか、他の種族なので年齢や感情が上手く読み取れない。恐らく年上だと思うのだが、もし年下だった場合は非常に失礼になってしまう。


「そんな面倒な事はいいませんよ。 樽 で行きましょう」


 カウンターから酒が樽で運ばれ、テーブルの横に置かれる。少し驚いたのか大きく目を見開いた後、気分を良くしたのか樽にジョッキを突っ込んで酒を飲み始める。


「で、ワシに何の様だ」


「まずは久しぶりにドワーフに会ったので話がしたかったんですよ」


「ほぅ、変わり者に会ったのか」


 話しながら樽にジョッキを突っ込んではどんどん体に収めていく。ドワーフにとって酒は命の水と言うが、本当にどんどん腹に収めていく。


「えぇ、まだ12歳の頃でしたが、斧の扱い方を沢山教わりました」


「斧か。 そりゃワシらに敵う使い手は滅多におらんな。 ほれ 坊主も飲め」


 ジョッキを受け取り、樽から酒を掬うとそのまま飲み干す。

 ドワーフに付き合っていればこちらが酔い潰されかねないが、ドワーフと仲良くなるには一緒に酒を飲むか、鍛冶仕事を手伝うくらいしかないのだが、今回は色々覚悟のうえだ。


「それで、本題は ウルツァイトにでも行きたいと言ったところか?」


「えぇ、オーディン王国に戻りたいのですが、ミリシア帝国からでは戻りにくく、経由したいのです」


「……そうじゃな。 一度国に戻ろうと考えとったところだ。 その背の剣を見せるのなら、連れて行ってやろう」


 抜いてもいないのに剣の事を気付かれた。ドワーフは全員鍛冶師、武具の鋳造技術に目がないというが、例に漏れず目の前のドワーフもそのようだ。

 おかげで話も通じやすいのだが、なんていうか分かり安すぎる。


「ドワーフの国ウツルァイトに到着してからでしたら、構いません ここでは徴発される可能性がありますので」


 ミリシア帝国は治安はよくないが、執政もあまり良くない。状況によっては非常に珍しい武具も、領主などに献上するよう命じられてしまう可能性もあった。


「ふむ。 まぁいいじゃろう。 むっ、酒が切れたか」


「すみません。 3樽追加を御願いします」


「3じゃと? さすがに飲みきれんぞ」


 まるまる一樽を飲んでさすがに腹に溜まってきたのか、3樽と聞いて驚いている。


「12歳時にあったドワーフのおじさんは、宴会の占めはこうしてましたよ」


 届けられた樽を持ち上げるとひっくり返し全身に酒を浴びる。理由は分からないが、領地に鉄を打ちにきていたドワーフは宴会の占めは毎回こうしていた。


「ふっ、ふははははぁぁぁ! そりゃ嫁にぶん殴られる前の作法だわい! そのドワーフはきっと大馬鹿ものじゃな!!」


 笑いながら同じように酒樽を掴むと全身に浴び、残る一つとなった酒樽の酒を分け合いながら飲み干した。

 ドワーフは分かりやすい。頑固で大酒のみで時に乱暴だが、何よりも性格に裏表がなく親しみやすかった。


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