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後日談Ⅰ 田舎

  アルカードには分からなかった。


  ここがどこなのか。


  いや。


  たぶん夢なのだろう。


  だって。


  自分は再び封印されたのだから。


  だって。


  ここにはもう一人の自分がいるのだから。


  だって――


  こんな人生を手に入れたことなんて。


  一度もなかったのだから。


  ----------------


  夕陽が大地を優しく染めていた。


  晩秋の空気は少し冷たい。


  それでも。


  差し込む陽射しは驚くほど暖かかった。


  アルカードは長い竹挟みを肩に担いでいた。


  背中には竹籠。


  今日も蛇を捕まえていた帰りだった。


  大きく伸びをする。


  すると。


  後ろから声が聞こえた。


  温かくて。


  どこか楽しそうな声だった。


  「アルカード君」


  「また蛇を捕まえてたの?」


  アルカードは振り返る。


  「うん」


  「今日はいっぱい捕れたから」


  「たくさんお金になるんだ」


  自然と笑顔になった。


  目の前の女性も笑っている。


  記憶の中と同じ。


  優しい笑顔だった。


  その後ろでは。


  七つか八つくらいの男の子が母親の陰へ隠れながら彼を見ている。


  「さすがアルカード君ね」


  女性はくすりと笑った。


  「今夜はお母さんと一緒にうちへ来てね」


  「ご飯作るから」


  「うん」


  「分かった」


  アルカードも笑う。


  それが当たり前みたいに。


  ----------------


  町で蛇を売った帰り。


  アルカードは手に入れたお金で焼き鳥を買った。


  普段なら買わないような量を買った。


  それから村へ戻る。


  村人たちは相変わらずだった。


  アルカードの姿を見ると。


  目を逸らす。


  道を空ける。


  必要以上に近付こうとはしない。


  けれど。


  そんなことはどうでもよかった。


  アルカードは真っ直ぐ家へ帰る。


  家の中では。


  母親が火の明かりの下で針仕事をしていた。


  去年の冬服を繕っている。


  だが。


  アルカードの姿を見ると。


  すぐに針を置いた。


  「おかえり」


  「ただいま」


  アルカードは笑う。


  「そんな古い服、もう直さなくてもいいのに」


  「僕だって結構稼げるようになったんだからさ」


  母親は困ったように笑った。


  「もったいないじゃない」


  その時。


  アルカードの手にある焼き鳥へ気付く。


  「あら?」


  「今日はどうしたの?」


  「食べたくなったの?」


  「温めてあげようか」


  「違うよ」


  アルカードは首を振る。


  「■■■姉ちゃんの家に呼ばれてるんだ」


  「あの子、これ好きなんだ」


  「そうだったわね」


  母親は頷いた。


  「じゃあお菓子も持って行きましょうか」


  「きっと喜ぶわ」


  ----------------


  食卓を囲む。


  みんなが笑っていた。


  アルカードは男の子の皿へ焼き鳥を載せる。


  男の子は夢中で食べ始めた。


  その様子が少しおかしくて。


  思わず笑ってしまう。


  姉さんは鍋からスープをよそっていた。


  まずはアルカードのお母さんへ。


  次は夫へ。


  そして三皿目を手にした姉さんが、

  笑顔でアルカードのところへやって来た。


  柔らかな笑顔だった。


  「アルカード君」


  「今日もお疲れさま」

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