表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/24

幕間 尋問

  男は手錠と足枷を嵌められていた。


  全身を拘束魔法で縛られたまま、

  椅子へ固定されている。


  薄暗い部屋だった。


  鼻をつくのは湿った黴の臭い。


  管理局の連中め。


  心の中で何度目かも分からない悪態を吐いたその時だった。


  扉が開く。


  男は顔を上げた。


  入ってきた人物を見て、

  少し意外に思う。


  高官でも軍人でもない。


  ただの老婆に見えたからだ。


  だが。


  視線が合った瞬間。


  考えを改める。


  ――ただ者じゃない。


  老婆は静かに歩いてくる。


  そして男の正面へ腰を下ろした。


  「君が教団の団長ですか?」


  男は頷く。


  「だったらあんたは誰だ?」


  「行動部長か?」


  「思ったより年寄りだな」


  老婆は答えない。


  ただ質問を返した。


  「なぜこの国に反対するのですか」


  「なぜ罪のない人々を殺したのですか」


  少しだけ間を置く。


  「……あなたは本来、そういう人間には見えません」


  断定だった。


  少しも迷いがない。


  自分の判断を疑っていない口調だった。


  男はしばらく黙る。


  やがて。


  低く呟いた。


  「この国はもう終わってる」


  「ほう」


  たった一言。


  それだけなのに。


  胸を押さえ付けられたような圧迫感があった。


  男は顔を上げる。


  思わず声が大きくなった。


  「真実を知れば、誰だって同じだ!」


  口を開いた瞬間だった。


  今まで押し込めていた感情が溢れ出す。


  「俺は昔、学校で魔法陣を教えていた!」


  「生徒が社会へ出ていくのを見るのが嬉しかった!」


  老婆は無表情のまま聞いている。


  男は構わず続けた。


  「だが後で知ったんだ!」


  「この国の真実をな!」


  「指定封印地!」


  「その全てが巨大な術式だった!」


  「国民の命を吸い上げるためのな!」


  拳を握る。


  声に憎悪が混じる。


  「だから学校を辞めた」


  「そして真実を伝え始めた」


  「もちろん誰も信じなかったさ」


  「妻も娘もだ」


  苦笑する。


  乾いた笑いだった。


  「最後に残った連中の大半は狂人だった」


  「社会への不満をぶつけたいだけの連中だ」


  「それでも構わなかった」

  

  「利用するには十分だった」


  「だから怪物になれる薬を与えた」


  「この国を壊せるなら」


  「それでいいと思った」


  「だから封印地の魔物を解放した」


  「どうせ同じだろう?」


  「狂人に殺されるのも」


  「魔物に殺されるのも」


  「封印地に殺されるのもな」


  そこで初めて。


  老婆が口を開いた。


  「残念ですが」


  「あなたは失敗しました」


  「教団は第一封印地で全滅しています」


  男は鼻で笑う。


  「それにアルカードもいるんだろ?」


  「今頃頭を抱えてるんじゃないか?」


  嘲るような声だった。


  「それに俺を殺したところで意味はない」


  「真実が広まれば」


  「俺みたいな人間はいくらでも現れる」


  「その尋問記録も」


  「あんた自身もだ」


  「結局はこの国の罪を広めることになる」


  老婆は頷いた。


  「なるほど」


  そして。


  机の上に置かれていた自動記録装置へ視線を向ける。


  「忠告に感謝します」


  次の瞬間。


  剣閃が走った。


  記録装置が真っ二つになる。


  男が目を見開く。


  何かを言うより早く。


  剣先が喉を貫いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ