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群青雨色紫伝 ー東雲理音の異世界日記ー  作者: MIRICO
第一章

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17 ー謎ー

 笑みとは、ツンデレにこそよく生える。


 デレてはいないか。


 などと余計なことを考えて、いつも通り四阿で休んでいた。

 真昼間、建物目の前で、いきなりぶすっ、とかはなかろう。

 そう考えても、恐怖はあった。

 しかし、どうやら警備が近くにつくことになったようなので、その分安心して庭に出てきた。


 昨夜の事件は、この場所の建物の人間にも大きなショックを与えたらしい。

 女性たちはどこか顔色が悪く陰鬱で、廊下や部屋の先々でささやき合うのを目にした。

 渡り廊下にたれていた血の跡は掃除婦が綺麗に拭き取り、その跡はもう残っていない。けれど男たちが集まり、辺りを注意深げに調べている。

 警備が増えたのだ。

 今まで女性ばかりの兵士だったのが、男に変わった。女性の兵士も増えたように思えた。

 理音が歩めば、後ろから人が付いてくる。それが自分が狙われた証拠であって、それも今朝になって納得しはじめていた。


 大体、あんな大舞台に理音が織姫の隣にいた時点で、理音が邪魔だと思う人間はいるのではないか。


 単純明快な話としては、一番の理由だと思うのだ。

 どういう立場としてあの舞台に立たされたかはわからないが、王様の横に陣取った女。

 女である。

 女である自分が隣にいれば、あ、邪魔だな。と思う輩がいるのではないかと。


 これについて答えはないし、事実はわからないが、まだ若い織姫には奥さんはいないようであるし、そこで女の自分が隣にいれば、誰だって、誰あの女?になるのは明らかだった。

 実際その目を見ている。舞台下から自分を視界に入れる者達の冷めた顔は、気分のいいものではなかった。

 事実は全く異なり、織姫は理音をそんな女として全く興味を持っていないわけだが、それでもあの場に連れた意味はあるのだろう。

 そのせいで狙われた確率は高くなかろうか。


 織姫が理音が邪魔だと思えばそれはすぐに行われるし、そうでないならば、他の者が理音は邪魔だと思ったわけで、だとしたら、理音をよく思わない者、が存在するのだ。

 そうして、理音はここに来てからまだ一週間程度である。大舞台に出て、すぐに命を狙われた。わかりやすくそれが理由だとしか思えない。


 その詫びのように警備は増えた。

 今の所、織姫は理音に死なれては困ると思っているのだ。


 それについては少しだけ安堵した。

 いつ捨てられるかわからない我が身である。今の所はここにいていいのだ。


「なんて、織姫の顔色伺って生きるとかは、ちょっと、なー」

 伺っても言葉をかけられないので、機嫌を損ねた時におべっかは使えないのだが。

 使えてもやる気はないが。


 しかし現実、もし放られたら自分は生きていけない。言葉すら通じない自分に、何ができるかもわからない。

 ついため息を吐く。


 ため息の間に鳥のさえずりが木漏れ日と共に降り立って、池に姿を下ろした。

 また違う鳥。


 庭は木々が多いために、訪れる動物も多かった。鷺のように大きさがある鳥も、雀のように小さな鳥も多い。

 タブレットからの音楽に混じって、自然の音が聞こえる。

 そこに、足音がプラスされた。


 この四阿には、橋を渡らなければ来られない。人が付いてきても、理音と一緒に橋を渡る者はいなかった。

 だから、その足音が誰なのか、すぐに気づく。


 今日のファッションチェックである。

 ポイントは、海のような青を基調とした鮮やかな色彩だ。

 羽織は紺で、その青を抑えている。

 細かい模様はいつものこと。よく見ると、鮮やかな青色が刺繍によって彩られているのがわかった。


 つか、すごい青だな。


 それがまたお似合いなところが素晴らしい。ある意味感嘆してしまう。


 髪を垂らした女性らしい装いだ。つまり、ワンピース型の着物だ。袖裾共にずるずるしている。

 髪を結ばないのは正解だ。垂らしていた方が今の衣装にとても合う。これでシースルーの羽衣でもつけてくれれば完璧なのに。

 だが、織姫ならばできればピンクがいい。

 などと失礼なことを考えつつ、案外ピンク似合いそうだけどな。などと更に失礼なことを考えると、織姫はぴたりと足を止めた。

 前と同じ、一歩あけてだ。

 ただし、上から見る目線は、この前のように蔑視したものではなかった。どこか、確認するような、昨夜のことで気落ちしていないか、確かめるような視線だった。

 しかし、ブルーシートに座り込み、椅子を背もたれにして、池まで足をのばしていた理音を足元まで見ると、織姫は目を眇めた。

 蔑む目を向けるかと思ったが、後方へ何かを言うと、女性がぱたぱたと急いで動く。

 しばらくすると、女性が羽織を一枚持ってきた。そうして織姫は、女性が戻るのを見送ることなく、ぱさりとそれを理音の膝に投げてきた。


「何?いらないよ。羽織なんて。寒くないし」

 羽織を返そうとすると、織姫は目で訴えてくる。そうして理音の肩を押すと、ずれるように言った。言ってないが言っているように思える。


 ブルーシートに座る気だ。

 理音を端に追いやって、織姫も地面に座り込んだ。返そうとした羽織を理音の足元に広げて、自分も足を池へ伸ばす。


 どうやら、スカートから出ている足が気に入らなかったらしい。はしたないとでも言うような目だったようだ。

 織姫は言葉が通じないとわかっているため、すぐに目で訴えてくる。ジェスチャーで伝えるという考えはお持ちでない。


 びらびらの装いの織姫が隣に座れば、ブルーシートはもちろん狭くなった。

 それに思ったより織姫の体格がいい。重ね着でわからなかったが、重ね着のせいかもしれないが、随分幅をとってくれる。

 そのおかげで、理音のパーソナルスペースが全くなくなった。

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