呪詛の効力をとりあえず抑える薬
フォッシャーは愛里に小さな紙袋を差し出した。その紙袋は薬をいれているようだったが、その色彩はとんでもなく気色悪そうなものだった。黒、茶、紫、赤、朱・・・なぜこんなに色んなものが入っているのか不思議な感じがした。
「この薬は呪詛の効力をとりあえず抑える効用があるんだよ。まあ主成分は妖怪の・・・脱皮したものや排泄物にそれに・・・まあ、詳しい製法はわたしも知らないけど、普通の人間だったら劇薬だけど、君は大丈夫さ。さっきの憲太君の料理を食べても平気だったから」
「それって・・・気色悪いけど、飲まないとダメなの?」
愛里は巨大すぎる瞳に涙を浮かべたままマジマジと見ていた。いまの愛里は妖怪そのものだったが、その姿のままではいけないことは確かだった。
「飲まなきゃ妖怪として一生を過ごす事になるなあ。まあ一つ目少女のコスプレをするんなら良いけど、そういうわけにはいかないだろ?
もしわたしの仕事を憲太君たちと一緒にしてくれるのなら、タダであげるよ。この薬結構高価なんだけど・・・働いたらタダでいいよ」
フォッシャーはそういったが、まるで悪役のようにも見えた。見方によっては勝手に人を妖怪にして脅迫しているようにも見えたからだ。
「働くって・・・大学辞めないといけないの? いっていないけど・・・」
愛里は涙を拭きながら言っていたが、あまりの涙の量なのでハンカチでは間に合わず、バスタオルを使っていた。
「大学は辞めなくてもいいさ。妖怪のための料理を出す仕事といってもいつもあるわけさないさ。でも妖怪のための食事を作ったり出したりするのは妖怪の血を引いていないとダメなんだよ。だから君たちが必要なんだ。それに被呪妖族は妖怪と付き合っているうちに呪詛が消滅するかもしれないのさ。そうすれば、普通に結婚できるし」
それを聞いた愛里は少し笑顔になった。もっとも大きな瞳なので人によっては引いてしまいそうであったが。
「します、します! わたし、やりますよ、本当に! でも、何をするのですか?」
「まあ、そうだねえ。詳しいことはおいおい言うけれども、食材を用意したり調理したり、給仕したりすることだよ。君もしていたでしょ、風雅寿司で。まあ、あそこよりも楽な仕事だよ。それに、お金もそれなりにあげるから」
そういってフォッシャーは先ほどの紙袋を差し出した。それを受け取った愛里はずぐ飲み干したが、あまりにも急いで飲んだためかのたうち回るよう床をはいつくばってしまった。
「痛い! 痛いよ! 今度は身体全体が燃えるように痛いよ!」
愛里はのたうちまわるように動き回っていた。その様子を見ていた憲太は少し焦っていた。




