愛里、動揺する!
「妖怪」になった愛里ははしゃいでいたけど、その原因を作ったのは憲太が作った一つ目の魚料理なのは確かであった。それにしてもフォッシャーはなんでそんなことをしたのだろうか?
「フォッシャーさん! どうして彼女を妖怪にしたのですか? 結構可愛らしいですけど、こんなんじゃあ表を歩く事なんて出来ないじゃないですか」
憲太はそういったが、意外なところから援護射撃があった。愛里の母親からだった。彼女は娘によく似た「お嬢様」で、年齢もそれほどいっていないようだった。
「実は、わたしが依頼したのです。狐塚さんから娘の事を聞いて、もしかすると身体の変化は私が原因じゃないのかなと。わたしの血をもっとも引いているのが愛里だと思ったので、遅かれ早かれ発現するはずだったのです。ただ、遅くなりすぎると人間の姿に戻れなくなるところでした・・・」
そういって愛里の母親はおもむろに立ち上がると、呪文のような言葉を言ったところ苦しみ始めた。そして再び立ち上がると愛里が喜んだ声を出してはしゃいでいた。
「やーだ、お母さんも一つ目少女だったの? でもお母さんはアラフォーだから一つ目夫人かしら? でもうれしいなあ」
そういって愛里は親子で一つ目女であることを喜んでいたけど、憲太はあまりの光景で呆然としていた。一体なんなんだこの親子は?
「愛里さん、実は君に大事な話があるんだよ。君の今の姿はお母さまと同じく被呪妖族であることが原因だ。呪妖族とは昔、江戸時代に妖怪を殺戮した公儀を務めていた一族が末代まで妖怪になる呪詛がかけられたんじゃ。それが君たちの一族の中に時々発生するんだ。しかもランダムで。
それが分かったのが先週の事で、君のお母さんに伺ったら被呪妖族だということだったので、今日の食事を用意したのだ。もちろん君のためにさ。
でも、問題はあるんじゃよ。その姿は訓練で人間の姿になれるようになるんじゃが、その訓練が問題だ。一か月ぐらいかかるんじゃよ。まあ、はやく身に付いたら戻れるようになるけど、何もしなかったら君は一つ目少女のままさ」
その言葉に天然少女の愛里も動揺しはじめた。人間の姿に戻れないかもしれないと聞いて。
「フォッシャーさん、わたしこの顔でも良いけどやっぱり驚くよね、この顔で買い物に行ったら? それならさすがに嫌よ、わたしに教えてよ人間の顔に戻れる方法を!」
一つ目になった愛里は大きな涙を浮かべていたが、さすがに瞳が大きいのでその涙粒も見たことのないぐらい大きなものだった。さすがに妖怪の姿でいることのデメリットに気付いたようだった。
「フォッシャーさん、どうにかならないのですか! このままじゃ愛里がかわいそうじゃないじゃないですか!」
「心配いらないさ。愛里くん、夏の間そこの憲太くんとそのお母さんと一緒に働く気がないかな? そうしたら自然に人間に戻れるようになれるはずさ」
ファッシャーはそういったが、いったいどこで働かせるというのだろうか、これって新手の勧誘みたいなものだろうか?




