表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憲太は妖怪料理人になりました  作者: ジャン・幸田
その弐:就職してみませんか
25/31

呪詛する魚シングルアイ・フィッシュ

 憲太は寿司屋で鮮魚をネタにするのを幾度もこなしてきたので、魚をさばくのに抵抗感はなかったはずだが、目の前にあるシングルアイ・フィッシュには躊躇ちゅうちょしてしまった。


 「フォッシャーさん。この魚をどうやって調理すればいいのですか?」


 「なんでもいいよ。寿司でも煮つけでも。そうそう酢メシはすぐ用意できるように炊飯ジャーとお米も寿司酢もあるし、調味料も一通りあるから。そうそう道具も一式揃っているから。

 実は前にうちに所属していた妖怪専属の料理人が使っていたものだから、なんでも出来るよ」


 「それはありがたいですが、その板さんはどこにいかれたんですか」


 「ああ、あんまりにも歳を取ったので引退したのよ。たしか三百歳だったかな」


 「・・・」


 とりあえず憲太が一つ目の魚を捌こうとした時、フォッシーは何かを思い出したかのように棚から耳栓を出してきた。


 「なんで耳栓なんかを?」


 「その魚はな、身を切り刻まれる時に相手を呪詛する念力波をだすんじゃ。まあ普通の人間ならそれで体調を崩してしまうんじゃ。まあ君もわたしも妖怪族だから耐性はあるのだが、念のためだよ」


 「・・・」


 憲太はこのとき、妖怪料理人は料理を提供する相手だけでなく、食材もまた不思議な事ばかりなことを垣間見るものであると思った。それにしても、こんな変な魚を愛里に食べさせてどうしようというのだろうか、疑問に思ってしまった。


 とりあえず憲太は魚の煮つけと握り寿司を作ることにした。シングルアイ・フィッシュのウロコを剥ぎ始めたところ、やはり呪詛を言っているのか。気色悪い感覚に襲われた。

 以前にも完全に死んでいない魚を捌き始めた時に俎板まないたの上で暴れ始めた事をしばしば体験した事があったけど、こんなふうに精神攻撃をしてくるというのは。やはりこの魚も妖怪なんだと思ってしまった。


 シングルアイ・フィッシュは身はタラかタイのような白身だったけど、やはり頭部は個性的過ぎた。いままで捌いた魚の中には片目が潰れたようなものもいたけど、生まれた時から一つ目の魚とは恐れ入ってしまった。


 「わるいけど憲太君。その魚の頭部を標本にするから綺麗に取ってもらえないかな? 標本としたら結構高値で売れるから」


 そういわれたので頭部を取り除いたところ、まだシングルアイ・フィッシュは恨めしそうな大きな目でこっちを睨んでいるようだった。それにしても冷凍になっていても魂がまだ残っていたんだろうか、こいつはと憲太は思っていた。


 憲太が煮つけと寿司をつくり準備ができたことになって、母親の紗那がやってきたけど、その姿に憲太はビックリしてしまった。なぜか朝見たときよりも若返っていたからだ。


 「お袋! いったいどうしたんだその姿は! なんか女子大生みたいじゃねえかよ」


 「いいんじゃない? これから夏なんだし恋をしたいなあと思って若返ったのよ。いままでの姿はコントロールして老けてみえるようにしていたけど、これが私の本当の姿。そうそう、あんたは男だから容姿は変えられないからね、残念だけど」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ