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憲太は妖怪料理人になりました  作者: ジャン・幸田
その弐:就職してみませんか
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紗那とフォッシーのデート?

 とある下町のミズボラしいまで古い喫茶店に憲太の母・紗那とフォッシーこと狐塚喜八郎定信が同じテーブルにいた。傍目から見るとアラサーの女とアラフィスの男が昼下がりのデートのような事をしているように見えた。その様子を見た者のなかには不倫なのか? という陰口をたたかれるかもしれなかった。


 しかし、二人は独身だし、妖怪族の血を引いているので物凄く長い時間を生きてきた男女だった。この時、紗那は七十二歳でフォッシーは二百六十五歳だった。


 「紗那さん久しぶりだね、前こうして茶を飲んだのは四十年前だったかな?」


 「たしかそうね。あの時はゲーム喫茶だったからインベーダーゲームの音がうるさかったわね。今日は静かでいいですけどね」


 「それにしても憲太君のお母さんが紗那さんだったとは、世間も狭いわ本当に。ずっと探していたあなたが傍にいたとは。どうして今まで潜伏していたのですか?」


 「それをご存知なのはあなたでしょ。わたしの体には八百比丘尼とともに魚人族の血も流れているでしょ。もし魚人族の首領に見つかったら憲太を取られてしまうから隠遁していたのよ。おかけで憲太には貧乏生活をさせてしまったけど、仕方ないわ。だってあの子、人魚族の血を引くものには珍しい男だから」


 「たしかに人魚族の血を引く男は数十年に数人しか存在しないはずだし・・・って、ことは憲太君を守るために?」


 「そうよ、成人する前に魚人族の頭領にみつかって洗礼を受けると、あの子海で一生暮らさなければならなかったんよ。まあ人間の成人を迎えたのでもう心配ないけどね。本当はあの子が結婚するまでは極めて長寿だということを隠してあげたかったわ」


 「そうだった。人魚族って長寿だったんだ。だから頻繁に戸籍を変えていたわけなの?」


 「そうよ、だからわたし戸籍上は五十二歳よ! でも、この姿で二十代にしか見えないからそろそろ変えてもらおうかな? そうすると今度は憲太と同じ年齢にでもしてもらおうかな?

 そしたら、もう一度誰かと結婚したいな、次も普通の人間の男と。だって妖怪族だとあと百年ぐらい一緒に生活しないといけないでしょ! まあ人間の男だと早く死ぬから悲しい思いをすることになるけど、次も人間の男と結婚したいなあ。

 あっ、ごめんなさいフォッシーさん。あなたわたしのことを好きだったんだわね」


 「それはいいですよ紗那さん。あの時は無理矢理ひどい事をあなたにしたのですから。本当ならこうしてお茶を飲んでいる資格はないのですから。本当にあの時はすいませんでした」


 「ううん、いいよ。あれから三十六年も経過したんだわ。今でも身体はうずくけどね本当の事をいえば。でもあの時は何百年も生きれる身体を呪ったものだわ。しかし、場合によってはまたしないといけないかもね。それよりも、今日わたしを呼んだのはうちの憲太のことでしょ?」

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