神棚の影!
風雅寿司本部はまさに落城寸前の状態だった。これじゃあ倒産するのも時間の問題のようだったけど、いったいどうして短時間に悪化したというのだろうか? やはり貧乏神がマット化したというのは本当なのかもしれなかった。
わずかに残った社員を探したら、六本木社長の奥さんがいた。六本木社長は創業者の孫で社員から「三代目」といわれていたが、自身が社長の器でない事をしっていたので、現場はほとんどマネージャーに任せきっていた。だから、俺んちに岡島マネージャーと一緒に来たりしたのだ。
また奥さんは経費にうるさい人で、仕入れ担当の社員がお米の購入交渉で会社のもくろんでいた数値よりも高かったとしてクビにするような権力者だった。そのせいで他の社員からも嫌われていたけど、本人は何ら介さずといった態度だった。
「すいません、今月退職する予定になっている山村憲太ですけど、間違いなく離職証明書を発行してくれませんか? 後日の郵送でもかまわないので」すると彼女はとんでもない事を言い出した。
「山村君だったわね。やめるの撤回してくれない? 派遣の事務員も店員も一方的に契約を打ち切られて困っているのよ。好きな店に配属させてあげるから」
「あのう、お言葉ですが岡島マネージャーはお前みたいな社員はリストラ対象だ! といって退職願を書かされたのですよ。それにお前のかわりなど沢山いるっていってましたし。岡島マネージャーに聞けばいいじゃないですか、俺の代わりは一杯いるそうですけど」
「そんなはずはないわ。手書きでなくちゃんと清書・・・あれ? これってワープロ打ちじゃないの?」社長の奥さんは何が起きていたかわかったようだったが、黙っていた。
「俺ですが、有給休暇は全部消化しましたので、もう退職するしかありません。岡島マネージャーの指示ですから」
「そんなの撤回よ! 本当に人がいないのだから。明日から店を半分休業にしても間に合わないのよ、人手が! おねがいだから!」
後で聞いた話では、今回の問題を切っ掛けにそれまで無理を強いていたパートやアルバイトが大量に離職したうえ、社員も増やさないようにと派遣に頼っていたのに派遣会社も引き上げたので、もうどうしようもない状態だったそうだ。
だから俺のように岡島マネージャーによってクビにされた社員やパートを引き止めていたというが、誰も応じてくれなかったそうだ。もう信頼関係などないから仕方なかったけど。
その時、奥さんの後ろにある神棚にはあやしい妖怪みたいなものの影があった。




