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生贄を出すのが嫌で隣国を裏切ったら、世界が終わるまでのカウントダウンが始まった  作者: 凪塩 未来


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シーズン3・第3話:廃墟のこだまと、最初の試練

シーズン3・第3話をお読みいただき、ありがとうございます!


オルテア村を後にして、魔力の澱みが渦巻くかつての帝国領へと足を踏み入れたセレスティアとライル。

そこで待ち受けていたのは、かつての悪夢を再現するかのような「偽りの残滓」でした。すべての真相に迫る第3話をお楽しみください!

オルテア村から数日間の道のりを経て、セレスティアとライルはかつての大国アルカディア帝国の首都があった領域に足を踏み入れていた。

かつては白亜の宮殿や贅沢を極めた大通りが立ち並び、人類の中心として栄華を誇っていたその場所は、今や見る影もなく荒れ果て、黒ずんだ石柱の残骸が墓標のように立ち並ぶだけの死の街と化していた。


上空は鉛色の雲に覆われ、太陽の光すら遮られている。

足元を踏みしめるたび、乾いた土の底から重苦しい魔力の波動がじんじと伝わってくるようだった。


「……空気が、重いな」

ライルは愛用の剣の柄に右手を添えたまま、周囲を警戒するように鋭い視線を巡らせた。その額には、わずかに冷や汗がにじんでいる。

「ここまでの道のりはただの魔力の揺らぎかと思ったが……どうやら違う。誰かが、意図的にこの場所で『過去の記憶』を再構築しようとしている」


「ええ、私も感じるわ」

セレスティアは手に持った杖をしっかりと握りしめ、前方を凝視した。

彼女の瞳には、かつてダマシテ王国に騙され、生贄として差し出された日の絶望と、あのとき世界を焼き尽くした漆黒の偽勇者の姿が、嫌でもフラッシュバックしていた。


――ガツン、と。


突然、静寂を切り裂くような硬質な音が、廃墟の奥深くから響いた。

二人は反射的に足を止め、身構える。

音のした方向へ目を凝らすと、霧が立ち込める崩壊した大聖堂の広場の中央に、いくつもの「人影」のようなものがぼんやりと浮かび上がってきた。


「なんだ……あれは?」

ライルが目を細める。

そこに立っていたのは、生きた人間ではない。かつてこの国を牛耳り、自分たちの権力と保身のために他者を踏みにじり続けた、ダマシテ王国や帝国のかつての高官たち、そして聖教会の神官たちの姿だった。

だが、その体は半透明の黒い靄で形作られており、顔のパーツはなく、ただぽっかりと空いた漆黒の穴だけがこちらを覗いている。


『――生贄を……差し出せ……』

『我が国を守るためだ。お前一人の犠牲など、安いものだろう……』

『神の名において、異端なる者を排除せよ……』


どこからともなく、無数のうめき声のような、冷酷な命令のような声が頭の中に直接響いてきた。それはかつてセレスティアたちが耳にし、絶望させられた「身勝手なエゴの言葉」そのものだった。


「くっ……! 過去の幻影か……いや、それにしては実体がありすぎる!」

ライルは舌打ちをし、抜刀した剣で襲いかかってきた黒い影の一体を激しく斬り払った。

しかし、斬り裂かれた影は霧のように散らばったかと思うと、すぐに再び黒い靄として結びつき、何事もなかったかのように立ち上がってきた。物理的な攻撃では消し去ることができない。


「だめよ、ライル! あれはただの幻影じゃないわ……! 人間の残した『エゴの残りかす』が、この地に残された魔力と結びついて具現化したものよ!」

セレスティアは杖を地面に突き刺し、聖なる魔力を展開して周囲の黒い影を押し返した。


『――お前たちも、どうせいつかは誰かを裏切る』

『自己中心的な本性から、逃れられる者などいない』


黒い影たちが、一斉にセレスティアたちに向かって手を伸ばしてきた。その群れの中心から、さらに強烈な漆黒のプレッシャーが放たれる。

それは、ただのモンスターの襲撃ではない。

「人間は結局、自分可愛さに誰かを犠牲にする生き物だ」という、この世界が抱える最も醜い真実そのものが、二人を精神的に押し潰そうと襲いかかってきているのだ。


セレスティアの呼吸がわずかに荒くなる。

――もし、私たちがまた追い詰められたら?

――もし、本当に大切なものを守るために、誰かを犠牲にしなければならない選択を迫られたら?

心の奥底を揺さぶるような悪意の囁きが、彼女の足をすくませようとする。


「お嬢!」

そのとき、ライルがガシリとセレスティアの肩を掴んだ。

振り返ると、ライルは一切の迷いのない、力強い笑みを浮かべていた。


「あんな過去の亡霊どもの戯言に耳を貸すな。俺たちは、あの終わりの日の向こう側で決めたはずだ。誰かの犠牲に頼るような生き方はもうしないってな!」


その言葉を聞いた瞬間、セレスティアの胸の中にくすぶっていた不安の霧が、スーッと晴れていくのを感じた。

そうだ。私たちはもう、あのときの無力な子供ではない。

失ったものの痛みを知っているからこそ、二度とあんな過ちを繰り返さないと誓ったのだ。


「ええ、その通りよ、ライル!」

セレスティアは力強くうなずき、杖を両手でしっかりと握りしめた。

彼女の全身から、かつての怯えた少女のものとは違う、凛とした、そして温かな光に満ちた魔力が眩いほどに噴き上がった。

シーズン3・第3話をお読みいただき、ありがとうございます!


帝国領の廃墟でセレスティアたちの前に立ち塞がった「エゴの残りかす」との激闘を描かせていただきました。

過去の亡霊を振り切り、二人が辿り着く真相とは一体何なのか……!?


それでは、第4話でお会いしましょう!

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