5.雨の日も
「……雨かよ」
朝、外に出た瞬間にユウマは顔をしかめた。
空は薄暗く、小雨が静かに降っている。
こういう日は依頼も減る。
「めんどくせぇな……」
ギルドに着くと、案の定人は少なかった。
その中に――
「おはようございます」
いつもの声。
ミナがいた。
「……お前ほんと毎回いるな」
⸻
掲示板を見ても、まともな依頼は少ない。
その中からミナが一つ選ぶ。
「これ、どうですか」
「倉庫の見回り?」
「雨の日は魔物が入りやすいので」
「へぇ……そういうのもあんのか」
ユウマは少しだけ感心する。
「じゃあそれでいいや」
⸻
倉庫は街の外れにあった。
古い建物で、周りに人も少ない。
雨音だけが響いている。
「なんか雰囲気あるな」
中に入る。
薄暗い。
ユウマは無意識にミナの後ろに立つ。
⸻
見回りは問題なく終わる。
魔物も出ない。
ただ、雨音だけが続いている。
帰り道。
まだ雨は止まない。
ユウマは少しだけ空を見上げる。
「……傘持ってねぇ」
「持ってますよ」
ミナが自分の傘を少し広げる。
「入ります?」
「いや狭いだろ普通に」
「問題ないです」
間髪入れずに言う。
ユウマは少し迷う。
「……じゃあ、ちょっとだけ」
ミナの隣に入る。
距離が近い。
無言。
雨音だけが響く。
「……」
「……」
気まずいわけではない。
ただ、少しだけ変な感じがする。
ユウマは前を向いたまま言う。
「お前さ」
「はい」
「ほんと変だよな」
「そうですか?」
ミナは少し考えてから言う。
「雨なので」
ユウマは小さく笑う。
⸻
その夜。
ミナは一人、報告をしていた。
「対象ユウマ・カザハラ。行動に変化なし」
いつも通りの内容。
だが、一瞬だけ言葉が止まる。
「……引き続き監視を継続します」
それだけを伝える。
(続く)




